先日、都内で会社を経営している資産家の社長からこんな相談を受けました。
「タワマン節税って、もう終わったんですよね?去年の法改正でダメになったって聞いて、もう検討するのをやめていたんですが……」
実はこの誤解、かなり広まっています。でも正確に言うと、「個人でタワマンを使った相続税対策」のうまみが減ったのは事実ですが、法人を使う戦略はまだ全然生きています。今日はその話を整理してお伝えします。
2024年改正で何が変わったのか
2024年の相続税法改正により、タワーマンションの評価額が実勢価格の最低60%まで引き上げられることになりました。
これまでは、市場価格1億円のタワマンが相続税の計算上では2,000〜3,000万円程度に評価されるケースもありました。その評価差を利用して相続税を大きく圧縮する、いわゆる「タワマン節税」が流行したわけです。
ところが改正後は、最低でも市場価格の60%が課税評価額になります。節税の幅が確実に狭まったのは否定できません。「もうタワマンは使えない」という声が出るのも、一定の理由があります。
ただし、ここで思考を止めてしまうのが一番もったいないのです。
法人で持てば、話はまったく変わる
相続税の改正はあくまで「個人で保有した場合の相続税評価」の話です。法人でタワマンを取得した場合、そもそも相続税の土俵に乗りません。
法人が不動産を所有すれば、適用されるのは法人税の枠組みです。ここで機能するのが、減価償却と経費計上という2つの武器です。
たとえば、法人で2億円のタワマンを購入したとします。建物部分を1億2,000万円とすると、鉄筋コンクリート造の耐用年数47年で毎年約255万円を減価償却費として計上できます。さらに管理費、修繕積立金、ローン利息なども法人の経費として落とせます。トータルで年間数百万円単位の課税所得を圧縮できるケースは、今も十分にあり得るのです。
「個人で持つか、法人で持つか」が本当の分かれ道
結局のところ、タワマン節税が有効かどうかの答えは、誰が・どのような目的で・どう保有するかによってまったく違います。
個人での保有を検討している場合、相続税対策としての旨みは確かに以前より小さくなりました。ただし、それでも市場価格より低い評価額で相続できる点には変わりなく、他の相続対策と組み合わせれば依然として選択肢の一つになります。
一方、法人活用を軸に考えるなら、改正の影響はほとんど受けません。むしろ注目すべきポイントは、法人税率と個人の所得税率の差をどう活用するか、そして将来的な出口戦略(売却時の税負担)をどう設計するかです。
ざっくり整理するとこうなります。
- 個人保有×相続税対策:改正により節税幅は縮小。他の手法との組み合わせが必要
- 個人保有×所得分散:家賃収入を分散させる目的なら引き続き有効なケースあり
- 法人保有×法人税対策:減価償却・経費計上で年間数百万円規模の節税効果が今も狙える
やってしまいがちな落とし穴
法人でタワマンを持つ戦略にも、注意点はあります。
まず、購入後すぐに売却するプランは税務上リスクがあります。不動産の売却益には法人税がかかりますし、短期売買と見なされると追加の課税リスクも出てきます。あくまで「中長期で保有しながらコストを経費化する」という発想が基本です。
また、法人の資金繰りと物件取得の規模感が合っていないと、キャッシュフローを圧迫するだけになります。節税額だけを見て購入を決めてしまうのは本末転倒です。自社の財務状況と照らし合わせた冷静な判断が必要です。
そして最も重要なのは、タワマンを選ぶこと自体が目的にならないようにすること。あくまで手段のひとつです。節税の目的と規模に応じて、タワマン以外の不動産や他の節税スキームと比較した上で判断することをおすすめします。
「終わった」と思い込む前に、まず設計を見直してほしい
タワマン節税は死んでいません。ただし、かつてのように「とりあえずタワマンを買えば節税になる」という時代ではなくなったのも事実です。
今求められているのは、個人と法人のどちらで持つか、いつ買っていつ売るか、他の資産とどう組み合わせるか、という全体設計の精度です。
もし「タワマン節税はもう使えない」と思って思考停止していた方は、ぜひ一度、法人活用の観点から改めて検討してみてください。今期の利益が見えてきた段階で税理士に相談するのが、一番タイミングとして理想的です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。