先日、ある社長からこんな相談を受けました。

「地方の物件、利回り10%でめちゃくちゃいいですよね。買っておいたほうがいいですか?」

気持ちはわかります。利回り10%と聞けば、誰でも目が輝きます。でも法人での不動産投資を考えるとき、「利回りが高い=節税に有利」という発想は、少し危険です。

地方高利回り物件、節税効果が消えるのが早い

例えば、地方の築古木造物件を2,000万円で取得したとします。利回り10%なら年間200万円の家賃収入。帳簿上の見栄えはたしかに抜群です。

ところが、木造の法定耐用年数は22年。築古物件だと残存耐用年数がさらに短くなり、減価償却が2〜4年で終わってしまうケースも珍しくありません。

その間は毎年100〜150万円の減価償却費が計上でき、法人税をぐっと圧縮できます。ですが、償却が終わった途端に状況は一変します。家賃収入はそのまま課税所得になり、節税効果はゼロ。むしろ法人税の負担が増える局面を迎えることになります。

「あれ、買ったときより手残りが減ってる……」という社長、実は少なくないのです。

都心低利回り物件、じわじわ長く効いてくる

一方、都心のRCマンションを1億円で購入したケースを考えてみましょう。利回りは4%程度ですから、年間家賃収入は400万円。地方物件と比べると、数字の派手さはありません。

ただし、RC造の法定耐用年数は47年。1億円を47年かけて償却するわけですから、毎年の減価償却費はざっくり200万円前後。しかも、建物比率や築年数の設定次第では、年間で法人税を200万円以上圧縮できるケースもあります。

これが10年、15年と続くとなると、累計の節税効果は相当な額になります。

さらに都心物件は、出口戦略でも有利に働きやすいです。立地の需要が安定しているため、売却時に値崩れしにくく、法人で売却益を出しても、他の損失と合算して税負担を調整する余地が生まれます。地方の築古物件は、そもそも売り手がつきにくいというリスクもはらんでいます。

比較すると見えてくること

二つの物件の違いを整理すると、こんなイメージです。

  • 地方高利回り物件(例:2,000万円・利回り10%) → 減価償却が数年で終了。節税効果は短命で、その後は税負担が増す
  • 都心低利回り物件(例:1億円・利回り4%) → 長期・高額の減価償却が継続。年200万円超の法人税圧縮も可能

「利回りが高い=節税に強い」は、個人投資家の感覚でもある程度通用しますが、法人の税務では話が変わってきます。重要なのは、何年にわたって、いくら減価償却を取り続けられるかという設計です。

結局、どちらが正解か

正直に言えば、「どちらが絶対に正解」とは言い切れません。法人の規模、他の資産状況、キャッシュフローの必要性、出口のタイムラインによって、最適な選択は変わります。

ただ、「利回りだけ見て買った」という判断は、後から痛い目を見やすいのも事実です。特に法人で購入する場合は、減価償却のシミュレーションを5〜10年スパンで描いたうえで意思決定することを強くおすすめします。

税理士に相談する際は、「この物件を買ったとき、減価償却はいつまで続くか」「売却時の税負担はどうなるか」を必ずセットで聞いてみてください。その一問が、数百万円の差を生むことになります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。