先日、アパートを2棟持つ資産家の社長からこんな相談を受けました。
「確定申告のたびに、税金の多さに驚くんです。何か手はありませんか?」
聞いてみると、すべて個人名義でそのまま運用しているとのこと。それを聞いて、「それは高くなるはずですよ」とお伝えしました。
個人で不動産収入を得ると、給与などの所得と合算されて課税されます。所得が積み上がるほど税率も上がり、住民税と合わせると**最高55%**まで持っていかれることがあります。年間1,000万円の家賃収入があっても、手元に残るのは450万円以下という計算です。
そこで検討したいのが、「資産管理会社」を活用する方法です。
法人にすると実効税率が約32〜34%に下がる
資産管理会社とは、不動産や株式などの資産を管理・運用するために設立する法人のことです。個人で抱えていた資産を会社名義に移し、そこから役員報酬という形でお金を受け取る仕組みです。
法人の実効税率は、所得規模にもよりますが約32〜34%に収まります。個人の最高税率55%との差は最大23%。1億円の不動産収益で比べると、個人では最大5,500万円の税金がかかるところを、法人なら3,200〜3,400万円程度に抑えられる計算です。
ただし、税率の差だけが資産管理会社の魅力ではありません。法人ならではの「3つの特典」を組み合わせることで、節税効果はさらに大きくなります。
特典① 家族を役員にして所得を分散する
法人にすると、配偶者や子どもを役員として登用し、役員報酬を支払うことができます。
たとえば、社長1人に3,000万円の収入が集中しているより、夫婦でそれぞれ1,500万円を受け取るほうが、合計の税負担は大きく下がります。所得税は累進課税なので、1人に所得が集中するほど高い税率が適用されるためです。
家族全体の総所得は同じでも、分散するだけで税率が下がる。これが所得分散の本質です。
ただし、役員として実際に業務に関与していることが前提です。名前だけ貸す「名義だけ役員」は税務調査で否認されるリスクがあるため、実態を伴う形で設計することが大切です。
特典② 減価償却費を他の利益と相殺できる
不動産には「減価償却」という仕組みがあります。建物は時間とともに価値が下がるとみなし、その金額を毎年経費として計上できる制度です。
個人でも使えますが、生じた損失を他の所得と相殺できる範囲には制限があります。一方、法人の場合は不動産から生じた減価償却費を、事業所得などの他の利益と自由に相殺できます。
本業で2,000万円の利益が出ていても、不動産の減価償却で1,500万円の損失が生じれば、課税所得を500万円まで圧縮できる。この「損益通算の自由度」が法人の大きな強みです。
特典③ 個人より経費の範囲が広い
資産管理会社では、個人では認められにくい費用も経費として計上できるケースがあります。
たとえば社宅制度。会社が借り上げた物件に社長が住む形にすると、適切な自己負担分を超えた家賃を会社の経費にできます。個人で支払えばただの生活費ですが、法人を通すことで税務上の扱いが変わります。
出張旅費規程の整備、社用車の経費計上、法人保険の活用なども同様です。一つひとつは小さな節税でも、組み合わせると年間で数百万円規模の差になることも珍しくありません。
3つを組み合わせたときに本当の威力が出る
税率の差(最大23%)+ 所得分散による累進課税の引き下げ + 減価償却による課税所得の圧縮 + 経費計上範囲の拡大。これらが重なると、個人運用との差は年間数百万〜数千万円規模になることもあります。
冒頭の社長には、資産管理会社のスキームで試算してもらいました。結果、年間800万円以上の節税余地があることがわかり、すぐに設立準備を始めたそうです。
やみくもに設立すれば良いわけではない
資産管理会社は万能ではありません。設立・維持コスト(登記費用や税務申告費用)がかかりますし、不動産の名義変更には不動産取得税や登録免許税が生じることもあります。
資産管理会社が有効かどうかは、保有資産の規模、所得構成、家族構成、将来の相続プランによって大きく変わります。「他の会社がやっているから」という理由だけで動くのは危険です。
現在、個人名義で不動産を持っていて年間の家賃収入が1,000万円を超えているなら、一度「資産管理会社に移した場合の試算」を税理士に依頼してみてください。その1枚の試算書が、何年分もの節税のきっかけになるかもしれません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。