「ねえ、うちの節税、このままで大丈夫ですか?」
先日、顧問先の社長からそんなメッセージが届きました。年商3億円の不動産業を営む社長で、毎年きっちり節税対策をしてきた方です。話を聞くと、知り合いの経営者から「4月からルールが変わった」と聞いて、急に不安になったとのこと。
その不安、正解です。2026年4月から、法人節税にまつわるいくつかのルールが実際に変わっています。特に不動産絡みのスキームを活用してきた会社は、今すぐ確認が必要です。
落とし穴①:30万円未満の即時償却特例が終わった
中小企業の経営者なら馴染み深い、少額減価償却資産の特例。30万円未満の資産を購入した場合、通常は複数年に分けて減価償却するところを、購入した年に全額費用化できる制度でした。
この特例が、2025年3月末をもって期限切れとなりました。年間300万円まで適用できた、使い勝手のよい節税策でした。
「毎年3月末にパソコンや業務機器をまとめ買いして節税していた」という会社は少なくありません。ところが今年からは同じことをやっても即時経費化はできず、通常の減価償却が適用されます。資産の種類によっては4〜5年かけて経費化することになりますから、タイミング節税の効果は大幅に落ちます。
「まだ使えると思っていた」という声をよく聞きます。顧問税理士との連携が取れていない場合は、早めに確認してみてください。
落とし穴②:不動産管理会社スキームへの調査が厳格化
「家族に役員報酬を払って所得を分散させる」という節税策は、不動産オーナーの間で長く使われてきました。不動産管理会社を設立し、管理業務を委託する形で収益を法人に移す方法です。適切に設計すれば有効な節税策ですが、最近この手法への税務調査が明らかに厳しくなっています。
問題になるのは、管理会社の「実態」です。役員報酬を払っているのに実際の業務実績がほとんどない、管理業務を外部の業者に丸投げして自社では何もやっていない——そういったケースでは「実態のない法人」と判断されて否認されるリスクが高まっています。
調査官は、管理委託料の水準、管理業務の具体的な内容、役員の稼働実績などを細かくチェックします。「うちは大丈夫」と思っていても、業務日報や対応履歴、請求書の根拠などの証跡が整っていないと危険です。すでにスキームを運用している会社も、形式だけでなく「実態を証明できるか」という視点で一度見直しをおすすめします。
では今から何を使うべきか
落とし穴ばかり紹介して終わりでは無責任なので、代替策も整理しておきます。今の税制で使いやすいのは、この3つです。
修繕費の積極的な計上は、不動産を保有している会社に特に有効です。資本的支出(建物の価値を高める工事)ではなく修繕費(現状回復のための工事)として計上できれば、その期に全額費用化できます。外壁の塗り直しや設備の交換はグレーな判断になりやすいので、工事前に税理士と内容を確認しておくのがポイントです。
社宅制度の活用も、まだ整備していない会社にはおすすめです。役員が住む家を会社で借り上げ、適正賃料を本人から徴収する仕組みです。正しく設計すれば会社の経費として計上しながら、役員本人の課税所得も下げられます。家賃の高い物件に住んでいる役員がいる会社は、試算するだけでも価値があります。
賃上げ促進税制は、2026年も活用余地があります。一定の賃上げを実施した場合、税額控除率が最大45%に達するケースもあります。給与を上げることは採用力の強化にもつながりますし、税制上のメリットと経営改善を同時に実現できる数少ない手段です。ただし要件が細かいので、事前に試算してから判断するのが得策です。
法人節税は「同じ方法を毎年繰り返せば安心」という時代ではなくなっています。税制は毎年改正され、税務調査の目線も変化します。去年まで有効だったスキームが、今年から否認リスクを抱えることも珍しくありません。
今期の決算前に一度、自社の節税策を税理士と棚卸しすることを強くおすすめします。特に即時償却や不動産管理会社を活用してきた会社は、早めの確認が安心です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。