先日、ある社長からこんな連絡が来ました。
「去年、税理士に勧められて区分マンションを買ったんですが、あれって今どうなってるんですか……?」
声のトーンからして、すでに何かマズいことを察しているようでした。正直に言うと、その直感は正しかったのです。
「通達評価」という安全地帯が消えた
長らく、不動産を使った相続税対策は「時価と通達評価の差」を活用する手法が王道でした。市場価格1億円の物件でも、相続税の評価額が3,000万円になることがある。その差分が節税になる、という仕組みです。
ところが2024年1月から、区分所有マンションの相続税評価が大きく見直されました。評価額が実態に近い水準に引き上げられ、従来のような大きな差が生まれにくくなっています。
「じゃあ一戸建てや賃貸アパートなら大丈夫?」と思う方も多いでしょう。しかしそれも楽観できません。最高裁がすでに「通達評価にとらわれず、時価で課税できる」と判断を下しているからです。形式だけ整えた節税スキームに対して、税務署は以前よりずっと積極的に調査を仕掛けてきています。
節税効果が1,000万円単位で縮小するケースが、実際に出始めています。
法人名義での取得にも落とし穴がある
「個人ではなく、法人名義で不動産を持てばいい」という話を聞いたことがある方もいるでしょう。確かに一面では有効な手法ですが、見落とされがちな落とし穴があります。
法人が不動産を取得してから3年以内は、その物件が自社株の評価に時価で反映されます。つまり、節税どころか自社株の評価を押し上げて、相続税の課税対象を増やしてしまうことになりかねません。
3年経過すれば通常の帳簿価額で評価されるため、短期保有のつもりで取得した物件が思わぬリスクを生んでいる事例も見受けられます。「持って3年」は最低限の前提条件です。
今すぐやるべき3つのこと
では、不動産を活用した節税スキームを持っている社長は、今何をすべきか。整理すると、以下の3点になります。
① 既存の不動産スキームを棚卸しする
いつ、何のために、誰のアドバイスで取得した不動産なのかを改めて確認してください。「昔の税理士に言われたまま持っている」という場合、制度が変わった今も同じ前提で機能しているとは限りません。
② 法人名義物件の取得時期を確認する
取得から3年を過ぎているか否かで、自社株の評価への影響が変わります。決算書や登記簿を引っ張り出して、取得日を確認しておきましょう。
③ 出口戦略を早めに設計する
「とりあえず持っていれば得になる」という時代は終わりました。いつ、どのように手放すか(あるいは次世代に移すか)の計画を、今のうちに税理士と一緒に描いておくことが重要です。特に相続が視野に入ってきている社長は、後回しにするほどコストがかさみます。
「情報が古い」まま動くのが一番怖い
節税スキームの怖いところは、「組んだときは正しかった」という事実が残ることです。当時の税理士は間違っていない。でも制度は変わる。そのギャップに気づかないまま何年も経ってしまうケースが、最近は本当に多いと感じています。
不動産を使った節税を考えているなら、今すぐ「現行制度で本当に機能するか」を確認することをおすすめします。すでに持っている方も、一度担当税理士に棚卸しを依頼してみてください。1時間の相談で、数百万円の損失を防げることがあります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。