先日、年商3億円ほどの建設会社を経営する社長からこんな相談を受けました。

「税理士に『今期は役員報酬を変えたい』と言ったら、『もう無理です』って言われたんですよ。どういうことですか?」

実はこれ、税法上ごく当たり前の話なんです。でも、知らないまま損をし続けている社長が本当に多い。今日はこの「役員報酬を変えられる時期」について、できるだけわかりやすくお伝えします。

年に一度しか開かない「変更の窓」

役員報酬が会社の経費として認められるには条件があります。それは毎月同額を継続すること(定期同額給与)です。

途中で金額を変えると、変更分が「経費として認められない」とみなされてしまいます。税務署からすると「それは給与じゃなくて利益の分配では?」という話になるんですね。

では、いつ変更できるのかというと、事業年度が始まってから3ヶ月以内です。3月決算の会社なら4〜6月がそのウィンドウ。6月を過ぎてしまったら、その期は変更できません。次に変えられるのは来年の4月——丸1年待つことになります。

報酬額の差が、年間100万円超の税負担の差になる

「毎年同じ金額でいいんじゃないの?」と思っている社長ほど要注意です。

所得税は累進課税で、課税所得が900万円を超えると税率33%、1,800万円を超えると40%に跳ね上がります。一方、中小企業の法人税は年800万円以下の部分が実効税率で約15〜20%です。

つまり、役員報酬が高すぎると個人の所得税が激増し、低すぎると法人に利益が残りすぎて法人税が増える。この最適なバランスポイントが存在します。

たとえば前期より利益が2,000万円増えた会社で、報酬を据え置きにしていたとします。その増えた利益に法人税がかかる一方、社長個人の税率はそのまま。報酬をうまく設計していれば、世帯全体で年間50万〜100万円以上の節税になっていたかもしれない——そういうケースは珍しくありません。

「今期は様子見で」を毎年繰り返していませんか

ここで怖いのが、この「様子見サイクル」にはまってしまうパターンです。

4月に入ったら「まだ今期の利益が読めないから」と先延ばしにして、気づけば6月末。「今期は変えられないね」とそのまま1年が過ぎる——これを毎年繰り返している社長が実に多い。放置コストは毎年積み上がっていきます。

仮に最適化できていないことで年間50万円余計に税金を払っているとしたら、5年で250万円、10年で500万円です。払い続けた税金ではなく、本来払わなくてよかった税金かもしれません。

変更を検討するときに確認したい3つのこと

実際に見直す際に、税理士と一緒に確認してほしいポイントです。

今期の利益見込み:前期の着地と今期の売上見通しをベースに試算します。上ブレする可能性があるなら、少し低めに設定しておくのが無難です。

社会保険料とのバランス:報酬を上げると社会保険料も連動して増えます。月1万円上げても手取りが1万円増えるわけではなく、健保・厚生年金の等級が上がることで実質負担が増えることもあります。

配偶者・家族役員の報酬:配偶者や親族が役員に就いている場合は、世帯全体での最適化が可能です。税率の高い社長から低い家族役員に所得を分散させることで、世帯の総税負担を下げられることがあります。

今すぐ税理士に一言だけ聞いてみてください

この4〜6月の窓が閉まる前に、税理士に「今期の役員報酬、このままでいいですか?」と聞いてみてください。それだけでいい。

もし税理士から「試算してみましょう」という話が出てこないなら、一度積極的に確認を取ることをおすすめします。役員報酬の最適化は、毎年かならず確認するべき、社長の大事な仕事のひとつです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。