先日、収益物件を3棟持つ製造業の社長から「確定申告のたびに税金が多すぎて嫌になる」という相談を受けました。
話を聞くと、3棟すべてが個人名義。収益はしっかり出ているのに手元に残るお金が想像より少ない。その原因は「物件の良し悪し」でも「管理会社の問題」でもなく、名義にありました。
個人と法人では、税率・経費・会計処理の自由度がまるで違います。順に見ていきましょう。
3位:減価償却のタイミングが選べる
建物を持つと毎年「減価償却費」という経費が発生します。個人の場合、この金額は毎年必ず一定額を計上しなければなりません(強制償却)。利益が少ない年でも、赤字の年でも、決められた額をそのまま計上するだけです。
一方、法人は任意償却が認められています。利益が大きく出た年に多めに減価償却を計上して課税所得を圧縮できる。逆に赤字の年は計上を抑えることもできます。
この「調整できる」という自由度が、長期的な税コントロールに大きく効いてきます。個人にはない武器です。
2位:経費として落とせる項目の幅が段違い
個人で不動産収入があっても、経費にできるのは基本的に「その不動産に直接かかる費用」だけです。修繕費、固定資産税、ローンの利子……といった項目に限られます。
でも法人で持つと話が変わります。物件の管理に関わる役員への報酬も経費。物件視察の出張費も経費。さらに、役員が法人所有物件に住む「社宅」スキームを組み合わせれば、住居費の大部分を損金に落とすこともできます。
「不動産に関連するコスト」の解釈が、法人の方が圧倒的に広い。これが個人との大きな差です。
1位:税率の差が、毎年積み重なる
これが最も大きなポイントです。
個人の不動産所得は「総合課税」の対象で、給与や事業収入と合算されます。所得が高い社長ほど税率が跳ね上がり、住民税を含めると最高税率は55%。不動産で100万円稼いでも、55万円が税金として消える計算です。
対して法人の実効税率は、所得800万円を超えても約34%。この差は21ポイント。100万円の不動産収益で毎年21万円、手元に残る額が違ってくる。物件数や収益規模が大きくなるほど、この差は加速度的に広がります。
冒頭の社長のケースで試算してみると、3棟合計の年間収益が約1,500万円。個人名義のままなら税率50%超の課税が続く状態で、法人に移すだけで年間200〜300万円単位の節税効果が見込めました。
移転には「コスト」と「タイミング」の見極めが必要
ただし、個人名義から法人への不動産移転(売買)は、無償や著しく低額だと贈与税や寄附金課税の問題が生じます。適正な売買価格での取引が原則で、登録免許税・不動産取得税・仲介手数料なども発生します。
「法人の方が有利」というのは原則ですが、物件の規模・残債・保有年数・移転コストによって実際の効果は変わります。「法人に移すべきか」「新規取得から法人名義にすべきか」も、状況によって答えが異なります。
まずは今持っている物件の収益構造を税理士に棚卸ししてもらい、「このまま個人で持ち続けるコスト」を数字で確認するのが最初の一手です。思わぬ金額が出ることも少なくありません。
個人名義で収益物件を持ちながら「なんとなく税金が高い」と感じている社長は、ぜひ一度、法人活用の試算を依頼してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。