先日、不動産を2棟持つ製造業の社長から、こんな相談をいただきました。「家賃収入がけっこう増えてきたんだけど、法人でやったほうが得なのかな?」と。
その社長、会社からの役員報酬はすでに年間1,500万円。そこに個人名義のアパートからの家賃収入が年間600万円ほど乗っかっていたんです。税理士から「今のままだと税率が高いですよ」とは言われたものの、具体的にどう動けばいいかわからず、判断できずにいたというわけです。
個人で持つと、税率はどこまで上がるのか
家賃収入は「不動産所得」として、給与や役員報酬などと合算されます。
課税所得が1,800万円を超えると所得税率は40%。そこに住民税10%を加えると、50%近い税率になってしまいます。
先ほどの社長のケースでは、役員報酬1,500万円+家賃収入600万円で課税所得は軽く2,000万円超。試算してみると、家賃収入の半分以上が税金として消えている計算でした。これを見たとき、社長の顔色が変わりました。
「年間500万円」が法人化の目安になる
では、いくらから法人化を考えるべきか。
目安としてよく使われるのが、年間の家賃収入が500万円を超えてきたタイミングです。
それより少ない段階では、法人の設立・維持にかかるコストが節税効果を上回ることが多い。でも500万円を超えてくると、話が変わってきます。
法人の実効税率は、課税所得800万円以下であれば中小企業の軽減税率が適用され、約22〜23%程度に抑えられます。個人の最高税率(住民税込み55%)と比べると、その差は歴然です。
役員報酬に分散させると、手取りが大きく変わる
法人化の最大の恩恵は「所得の分散」にあります。
不動産収入を法人で受け取り、そこから配偶者やご家族に役員報酬を支払う。これにより、同じ金額の所得を複数人に分けて課税することができます。
たとえば、個人で43%以上の税率がかかっていた家賃収入が、法人税率(約22%)+役員報酬(分散後の低い税率)という形に変わるわけです。
試算上は、年間の手取りが約150万円増えるケースも十分あり得ます。年収の水準や家族構成によって差はありますが、これは無視できない金額です。毎年150万円の差は、10年で1,500万円になります。
法人維持のコストも、きちんと見ておく
ただし、法人化すれば必ず得になるわけではありません。
設立時には定款作成・登記で20〜30万円程度のコストがかかります。毎年の税務申告は個人より複雑になり、税理士報酬も増えることが多い。また、赤字でも法人住民税の均等割(最低7万円/年)が発生します。
これらのランニングコストを差し引いても節税メリットがプラスになるかどうか、事前に試算しておくことが大切です。
既存の個人名義物件を法人に移す場合は、不動産取得税や登録免許税もかかります。「これから購入する物件は最初から法人で」というパターンのほうがコストを抑えやすいことも、頭に入れておいてください。
「今の自分は何%で課税されているか」を起点にする
法人化の判断で一番大事なのは、現在の実効税率を把握することです。
役員報酬が高い経営者ほど、不動産収入への限界税率も高くなります。逆に役員報酬が低い、またはすでに所得が分散されているケースでは、法人化の恩恵が小さくなることもあります。
「不動産収入が増えてきたな」と感じたタイミングで、一度税理士と一緒に現状の税率を確認してみてください。年500万円はあくまで目安であり、あなたの状況によって「法人化すべきライン」は変わります。数字を見てから判断しても、遅くはありません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。