先日、年商2億円ほどの製造業の社長から、決算3ヶ月前にこんな相談を受けました。「今期は珍しく利益が出すぎてしまって…。このままだと法人税がかなり重くなるんですが、何かできることはありますか?」

そのとき私が紹介したのが、「築古RC物件の減価償却戦略」です。うまく活用できれば、年間の課税所得を大幅に圧縮できる方法です。

築古RCの減価償却はなぜ強いのか

結論からお伝えすると、耐用年数を超えた(あるいは残存年数が短い)RC造の中古物件を法人で購入すると、建物部分を最短9年で全額経費化できます。

通常、RC造(鉄筋コンクリート造)の法定耐用年数は47年。新築なら47年かけて少しずつ経費化していくので、年間の減価償却費はそれほど大きくなりません。

ところが、中古物件の場合は話が変わります。

中古物件の耐用年数は、「法定耐用年数 × 20% + 残存年数 × 80%」という計算式で算出します。築年数が経っているほど残存年数が短くなり、同じ金額でも毎年計上できる経費が大きくなるわけです。耐用年数を完全に超えている物件なら「47年 × 20% ≒ 9年(端数切り捨て)」。つまり建物価格を9年で均等に経費化できます。

実際の数字で見てみよう

たとえば、建物評価額6,000万円の築古RC物件を法人で購入したとします。

9年定額法で計算すると、年間の減価償却費はおよそ667万円。これがそのまま損金算入(経費化)できます。

法人の実効税率は所得規模によって22〜34%ほどですから、年間に換算すると150〜220万円の節税になります。3年間続ければ、累計で最大600〜660万円の節税効果です。

年間利益が600万円前後の法人なら、減価償却費だけで課税所得をほぼゼロに近づけることも、計算上は十分あり得ます。

「不動産なんて縁遠い話だ」と思われるかもしれませんが、法人として物件を所有し減価償却を活用するのは、節税の基本戦略のひとつです。知らないだけで、実践している社長は少なくありません。

見落としてはいけない3つのポイント

ただし、この戦略にはいくつか押さえておくべき注意点があります。

土地は減価償却の対象外です。 不動産の売買代金は「土地」と「建物」に分かれますが、減価償却できるのは建物のみ。物件選びの段階で、建物評価額の割合がどれくらいかを確認してください。土地が大半を占める都心の物件では、期待する節税効果が得られないケースもあります。

構造と築年数の確認は必須です。 RC造として扱えるかどうかは、登記簿や建築確認書類での確認が必要です。「見た目はRC造っぽいけど実は鉄骨造だった」というケースもあります。耐用年数の計算が変わりますので、必ず専門家に確認を取りましょう。

購入タイミングと決算期のズレに注意。 減価償却費は保有期間に応じて月割りで計算されます。期末1ヶ月前の購入なら1ヶ月分しか計上できません。効果を最大化したいなら、事業年度の前半での購入が理想です。

「不動産を買う」という選択肢を持っておく

節税の話をするとき、多くの社長は「経費を増やす」「小規模企業共済を使う」といった対策を思い浮かべます。もちろんそれも大切ですが、築古RC物件を使った減価償却戦略は、スケールが一段違います。

物件購入という大きな意思決定が必要なので手軽ではありませんが、毎年数百万円規模の節税が複数年にわたって続くのは、他の方法ではなかなか得られないメリットです。

今期の決算に向けて「利益が出すぎている」「法人税が気になる」という状況であれば、不動産購入という選択肢を一度検討してみてください。物件の選定から試算まで、必ず担当の税理士を巻き込んで進めることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。