先日、関西で製造業を営む社長から電話がかかってきました。「タワマン節税、もうダメだって聞いたんですが、うちは大丈夫ですか?」と。声のトーンが少し沈んでいました。
この質問、最近ものすごく増えています。節税スキームというのは生き物で、制度の穴をついたものには、国がいずれ手を打ちます。2024年から2026年にかけて、不動産を使った節税手法が次々と封じられました。
知らないまま続けている社長は、今すぐ確認が必要です。
タワマン節税は「効果ほぼゼロ」に変わった
かつてタワーマンションは、相続税対策の王道でした。1億円の現金を持ったまま亡くなれば、そのまま1億円に課税されます。しかし同じ1億円でタワマンを買えば、相続税評価額が2,000〜3,000万円まで圧縮できた。その差額が節税になっていたわけです。
ところが2024年1月から、評価方法が大きく変わりました。市場価格(時価)と評価額の乖離が著しい場合に、評価額を引き上げる新ルールが導入されたのです。具体的には、評価額が時価の60%を下回る場合、60%まで引き上げられます。
従来の20〜30%水準から見れば、節税効果は大幅に落ちました。すでにタワマンを購入済みの社長が特に危険です。「買った当時は節税になっていた」と思っていても、今は効果がほぼゼロに近い状態になっています。物件はそのまま保有しているので、売却コストや管理費だけが残るという状況です。
一般社団法人スキームが2026年4月に封じられた
数年前から富裕層の間で広まっていた手法があります。不動産を一般社団法人に移転することで、個人の相続財産から切り離し、相続税を回避するというものです。
一般社団法人は「持分なし」が原則なので、設立者が亡くなっても法人の財産は相続財産に含まれない——その仕組みを使った節税でした。巧みな設計で、一時期かなり注目されていました。
しかし2026年4月施行の税制改正で、この手法は封じられました。同族支配と判定される一般社団法人については、その資産が相続税の課税対象となるよう改正されたのです。
すでに一般社団法人を使って不動産を移転している方は、専門家への確認が急務です。改正前の設計のままでは、想定していた節税効果が得られないどころか、意図せず課税されるリスクがあります。
オーバーローン節税はリスクが跳ね上がった
オーバーローン節税とは、借入で資産を取得し、借入残高によって相続財産を圧縮する手法です。不動産の評価額より借入残高が大きければ、差し引きでマイナスになる。そのロジックを使ったものです。
この手法に転機が来たのは2022年の最高裁判決です。「著しく乖離した評価は、税務当局が否認できる」という判断が下されました。「評価通りならセーフ」という従来の認識が、この判決で崩れたのです。
借入で時価と評価額の差が大きい物件を取得し、相続財産を圧縮する——その設計が税務調査でひっくり返るリスクが現実になりました。既存のスキームを見直さずに継続している場合、今が最後のタイミングかもしれません。
惰性で続けることが一番危ない
税制改正は毎年あります。そのたびに「使える手法」と「使えなくなった手法」が入れ替わります。
問題は、封じられた手法を惰性で続けてしまうことです。「昔、節税目的で買ったな」という認識のまま保有し続けると、節税効果はなくなっているのに、リスクだけが積み上がります。
今期の決算前に、不動産を使った節税スキームを一度見直してみてください。特に「タワマンを保有している」「一般社団法人を設立している」「借入で相続対策をしている」という方は、担当税理士と現状確認をしておくことを強くおすすめします。手遅れになってからでは、選択肢が大幅に狭まります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。