先日、ある資産家の社長からこんな連絡がありました。「去年からタワマンを2件購入して相続対策を進めているんですが……もう遅いですか?」

正直、少し焦りました。その社長が計画を立てたのは、おそらく改正前の情報をもとにしていたからです。

2024年1月、国税庁はひっそりと、しかし確実に「マンション区分所有の相続税評価方法」を全面的に見直しました。いわゆるタワマン節税を封じる改正です。旧ルールを前提に相続対策を組み立てている社長は、今すぐ戦略を見直す必要があります。

改正の核心は「市場価格との乖離を許さない」こと

改正前は、タワーマンションの相続税評価額が市場価格の2〜3割になるケースも珍しくありませんでした。たとえば5億円のタワマンが、相続税では1億5,000万円として評価される、といった話です。

今回の改正では「評価乖離率」という指数を計算し、市場価格の60%を下回る評価はすべて補正される仕組みになりました。5億円のマンションなら最低でも3億円が課税評価の下限になる、ということです。

節税効果が大幅に縮小したのは明らかで、旧ルールで設計したシミュレーションはほぼ意味をなさなくなりました。

知っている社長は、もう次の手を打っている

改正を受けて、相続税に精通した税理士の間では「次の一手」として、いくつかの戦略が共有されるようになっています。今も有効に機能している不動産節税の手法を3つ紹介します。

①一棟収益不動産——改正の「対象外」を狙う

今回の改正が適用されるのは「区分所有のマンション」に限られます。一棟まるごと所有するアパートや賃貸マンションは対象外です。

一棟収益不動産は、土地は路線価評価、建物は固定資産税評価額ベースで計算されます。市場価格との乖離が依然として大きく、都心の一棟マンションなら市場価格の50〜60%程度に評価が収まるケースも多い。

購入の選択肢を「区分→一棟」にシフトするだけで、まだ有効な不動産節税ができます。相続対策としての基本路線は変わっていません。

②法人名義でRC一棟を取得——毎期の税負担を継続的に削る

法人が一棟の鉄筋コンクリート(RC)マンションを取得した場合、建物部分を毎期の減価償却費として損金計上できます。

RC造の法定耐用年数は47年ですが、中古物件は耐用年数の再計算ができるため、場合によっては大きな減価償却費をまとめて取れることもあります。「毎期、利益が出すぎて法人税が重い」という社長には特に相性のいい手段です。

相続税対策というより法人税の継続圧縮という位置づけですが、資産形成と節税を同時に実現できる点が強みです。

③不動産小口化商品(任意組合型)——手軽に始める相続税対策

「不動産小口化商品」の中でも、任意組合型と呼ばれる仕組みは、路線価ベースで相続税評価がされます。1口500万〜1,000万円程度から投資でき、現物の一棟不動産を購入するより手軽に始められます。

相続税の節税効果が期待できる仕組みは今も健在です。ただし商品の内容は千差万別で、信頼できる運営会社かどうかの見極めが重要です。流動性も低いため、相続対策専用の資金で検討するのが基本です。

「何を、誰の名義で買うか」が節税の分岐点

不動産節税で最も重要なのは、「何を買うか」そして「誰の名義で買うか」です。同じ2億円の不動産でも、個人で区分マンションを買うのか、法人で一棟RCを買うのか、任意組合型の小口商品を選ぶのかで、相続税評価も法人税への影響も、結果は全く変わってきます。

2024年改正の前後で、不動産を使った節税の「正解ルート」は確実に変わりました。旧ルールを前提にしたまま動き続けることが、一番リスクの高い選択です。

現在、不動産を使った相続・節税の対策を進めている社長は、改正後の評価ルールに精通した税理士に、一度シミュレーションをやり直してもらうことを強くおすすめします。改正後の世界には、改正後の地図が必要です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。