先日、製造業を経営している社長からこんな話を聞きました。「今期また利益が出そうなんですが、税金で半分近く持っていかれるのが嫌で……何かいい手ないですかね」というものです。

こういう相談、毎年決算期前になると増えます。利益が出ること自体は喜ばしいはずなのに、税金のことを考えると素直に喜べないというジレンマ。経営者なら一度は感じたことがあるはずです。

そんな悩みに対して意外と見落とされているのが、「法人で不動産を持つ」という選択肢です。

法人で不動産を買うと何が起きるのか

法人で不動産を購入した場合、建物部分は「減価償却資産」として扱われます。毎年一定額を経費として計上できる、ということです。

たとえばRC造(鉄筋コンクリート造)の建物であれば、法定耐用年数は47年。仮に建物部分の取得価額が4,700万円だとすると、定額法で計算した年間の減価償却費は約100万円になります。これがそのまま会社の経費になります。

キャッシュの支出を伴わずに経費が生まれる、というのが減価償却の本質的なメリットです。

「年100万円の経費」が実際にどう効くか

法人実効税率は、所得800万円を超えると約34%になります(資本金1億円以下の中小企業の場合)。

年間100万円の減価償却費を計上できれば、それだけで約34万円の税負担が減ります。10年続ければ約340万円、20年続ければ約680万円です。

数字にすると地味に見えるかもしれませんが、「何か特別な手続きをしなくても、不動産を持っているだけで自動的に節税できる」という点が他の手法と大きく違います。

個人で持つより法人で持つほうがお得なのか

「個人で不動産を持てばいいのでは?」という疑問が出てきます。確かに個人でも不動産は持てますが、所得税の累進課税が問題になります。

課税所得が4,000万円を超えると、所得税だけで45%。住民税を合わせると実質55%近くになります。一方、法人の実効税率は最大でも約34%前後で頭打ちです。

稼げば稼ぐほど個人よりも法人で持つほうが有利になっていく、というのが大まかな構図です。年収が高い経営者ほど、この差は無視できません。

減価償却できるのは「建物部分だけ」という落とし穴

ここで一点、注意があります。減価償却の対象になるのは建物部分のみで、土地は対象外です。

購入時は売買契約書や固定資産評価証明書をもとに、土地と建物の按分をきちんと確認することが大切です。この按分が曖昧なままだと、期待していた節税効果が出ないことがあります。

また2007年4月以降に取得した建物については、減価償却の方法は定額法が原則です。定率法のような加速償却は使えないため、毎年均等額が経費になっていくイメージです。

税務調査が怖い、という方へ

「不動産節税って税務署に目をつけられませんか?」とよく聞かれます。

減価償却自体は完全に合法な節税です。法律の規定通りに費用を計上するだけですから、それが問題になることはありません。問題になりやすいのは、実態のない法人を使った節税や、按分の根拠が薄い申告など、別の部分です。

事業実態のある法人として適切に運用している限り、恐れることはありません。

今すぐ動くべき理由

ただし、一点だけ急いだほうがいい理由があります。税制は毎年見直されます。

資産性の高い節税策は改正のターゲットになりやすく、「後でいいか」と先送りにしているうちに制度が変わっていた、というケースは珍しくありません。現行の仕組みが来年も同じように使えるとは限らないのです。

不動産の取得は物件探しから契約・引き渡しまで数ヶ月かかることもあります。今期の利益が見えてきた段階で、早めに動き始めることが重要です。

まずは税理士に「法人での不動産取得を検討したい」と相談してみてください。財務状況や事業計画によって最適な進め方は変わりますが、選択肢を持っているかどうかで、決算の着地が大きく変わることがあります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。