先日、年商3億の建設会社を経営する社長から、こんな話を聞かせてもらいました。「税理士にこっそり教えてもらった不動産の話が、正直かなり衝撃だった」と。
その社長は個人名義でマンションを持っていたのですが、同じ物件を法人名義で保有した場合と比較してみたところ、手取りの差が想像以上に大きかったというのです。
個人と法人、不動産の扱いはここまで違う
個人で不動産を持つ場合、経費として認められるのは減価償却費と借入利息が中心です。固定資産税も控除できますが、あくまで「不動産所得の計算」の中での話です。
一方、法人が不動産を購入すると、話が大きく変わります。
減価償却費、ローンの利息、固定資産税、管理費、修繕費——これらがすべて法人の損金(経費)として計上できます。個人では別枠で処理しなければならないものが、法人なら売上から直接引けるのです。
これだけでも十分なのですが、本当においしいのはここからです。
「役員社宅」で経費をさらに厚くする
法人が購入した物件を役員の住居として提供するしくみが「役員社宅」です。
ポイントは、役員が会社に払う賃料の計算方法にあります。国税庁が定めた計算式で算定した「賃料相当額」だけを役員が負担すればよく、市場家賃との差額は法人の経費にできます。
たとえば市場家賃が月30万円の物件でも、国税庁の計算式による賃料相当額が月10万円なら、役員の自己負担は月10万円だけ。残りの20万円分は法人経費になります。
12ヶ月続ければ、それだけで年間240万円の経費増加です。
実質利回りが3%改善する理由
不動産投資では「表面利回り」と「実質利回り」という言葉があります。表面利回りは家賃÷購入価格の単純な数字ですが、実質利回りは税金や諸経費を引いた手取りベースの数字です。
法人で役員社宅を活用すると、節税効果で手取りが増えます。法人税率を30%程度と仮定すると、年240万円の経費増加は単純計算で72万円の節税になります。
購入価格3,000万円の物件であれば、この72万円の節税は実質利回りで2.4%の改善。諸経費の削減効果も加えると、3%以上の改善になるケースも珍しくありません。
「法人で不動産を持つと有利」と言われる理由は、ここにあります。
計算を誤ると税務調査を呼ぶ
ただし、一つ注意していただきたいことがあります。
役員社宅の賃料計算は、物件の固定資産税評価額をベースにした国税庁の計算式を使います。建物の種類(木造・RC造等)や延床面積によって計算方法が異なるため、自己判断で進めるとミスが起きやすい部分です。
賃料相当額の計算を誤ると、差額分が「役員給与」とみなされ、源泉所得税の追徴課税が発生するリスクがあります。また、物件購入のタイミング、役員社宅規程の整備、実際に居住しているかどうかの実態確認なども税務調査の確認ポイントになります。
設計を誤ると本末転倒になりかねないので、ここは専門家と一緒に進めることが必須です。
「個人の資産を法人で持つ」という発想の転換
多くの社長は、プライベートな住居や資産を個人で持つのが当たり前だと思っています。
しかし、ある一定規模以上の経営者にとっては、法人を通じた資産形成のほうが税務上のメリットが大きいケースが多くあります。住居だけでなく、別荘・保養所・社用車なども同じ発想で整理できます。
こうした「法人経由の資産活用」は、顧問税理士との深い関係がある社長だけに提案される情報です。決算書を作るだけの関係では、なかなかここまでの話は出てきません。
もし不動産の購入を検討しているなら、まず「役員社宅として使えるか」という視点を持ってみてください。経費化できる金額と法人税への影響を試算してもらうだけで、判断が大きく変わるはずです。
すでに個人名義で不動産を持っている社長も、法人への移転メリットがあるかどうか、一度シミュレーションを依頼してみることをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。