先日、資産運用に積極的なある社長からこんな連絡が来ました。「タワマン節税、今からでも間に合いますか?」正直、その質問を聞いて少し心配になりました。その方が思い描いているスキームは、すでに使えなくなっているものだったからです。

税制は毎年変わります。ところが「節税情報」はなかなかアップデートされず、古い情報のまま動いてしまう方が後を絶ちません。今回は、中小企業の社長の間で人気だった不動産系の節税スキームのうち、すでに使えなくなったもの3つと、今使える代替手法をお伝えします。

タワマン節税、もう昔の話です

タワマン節税とは、高層マンションの実勢価格と相続税評価額の乖離を利用して相続税を圧縮する手法です。市場価格3億円のタワーマンションが相続税評価額では5,000万円前後になっていた——そんな時代が確かにありました。

ところが2024年1月から、区分所有マンションの相続税評価額の計算方法が大きく見直されました。「市場価格との乖離が大きすぎる」として新たな補正率が導入され、以前と比べて節税効果は大幅に縮小しています。

今も「タワマン節税で相続対策を」と薦めてくる話があれば、まず立ち止まって確認してください。2024年以降に取得する物件では、以前のような大きな節税効果は見込めません。

全額損金の法人保険、2019年に終わっています

「決算が近いので、法人保険で全額損金にしたい」——こういう相談が今でも届くことに驚かされます。この手法は、2019年7月の国税庁通達改正で実質的に廃止されています。

以前は保険料の全額が損金として計上できる商品がありましたが、現在は解約返戻率に応じて損金算入できる割合が細かく制限されています。最高解約返戻率が85%超の商品であれば、加入初期は保険料のほとんどが資産計上になります。

法人保険が節税ツールとして完全に使えなくなったわけではありません。ただ、かつての「全額損金」という使い方はできない。古い情報を前提に動いてしまうと、期待した節税効果が得られないまま決算を迎えることになります。

不動産評価差スキーム、否認リスクが激増中

3つ目は、最近もっとも警戒が必要なものです。

意図的に相続税評価額と実勢価格の差が大きくなるよう不動産を購入し、相続税を圧縮する手法——不動産評価差スキームと呼ばれます。通達どおりに計算すれば評価額は低く出るのに、明らかに節税目的で直前に購入しているケースに対し、国税庁が「財産評価基本通達の総則6項」を根拠に、実勢価格ベースでの独自評価を適用する動きが増えています。

2022年には最高裁でこの手法への否認が確定した判決も出ており、国税庁の姿勢はより積極的になっています。節税のために購入した不動産が、申告後に否認されて追徴課税という事態は、決して対岸の火事ではありません。

今使える代替手法は「王道」にあります

廃止や否認リスクが増した手法がある一方で、今でも有効な節税手法はしっかり残っています。

ひとつは減価償却の適正活用です。法人で不動産を保有し、毎年の減価償却費を利益と相殺して税負担を平準化する。地味に見えますが、安定した効果があり、税制改正で突然使えなくなるリスクも低い。長く使い続けられる手法です。

もうひとつが不動産管理会社を活用した所得分散です。個人保有の不動産の管理を法人に委託し、管理料という形で収入を法人側に移転する手法です。法人税率が個人の所得税より低いケースでは、長期的な節税効果が期待できます。役員報酬として家族に分散させることもでき、設計の自由度も高い。

どちらも「スキーム」というより正攻法です。派手さはありませんが、じわじわと確実に効いてくる節税と考えてください。

情報の鮮度を確認する習慣を

「廃止された節税スキーム」の記事は、インターネット上にいつまでも残り続けます。情報収集の際は、必ず記事の公開日を確認してください。節税情報の鮮度は、1年前でも古いことがあります。

今の自社の状況に合った手法を選ぶためには、最新情報に精通した税理士への相談が最短ルートです。「まずは情報収集を」と思っているうちに決算を迎えてしまう前に、一度プロに現状を整理してもらうことをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。