先日、年商10億を超える建設会社の社長から、こんな相談を受けました。「法人名義で収益不動産を買おうと思っているんですが、個人で買う場合と何が違うんですか?」

この質問、実はとてもシンプルに答えられます。「初年度に使える経費の厚みが、根本的に違います」——これに尽きます。

個人購入と法人購入、何が違うのか

個人で不動産を買った場合、経費として認められるのは主に減価償却費と借入利息です。購入時にかかるさまざまな費用の多くは「取得価額」に含まれてしまい、毎年少しずつしか経費化できません。

ところが法人で購入すると話が変わります。購入した年度にまとめて損金算入できる費用がいくつかあり、これが初年度の節税効果を一気に高める要因になります。知っている社長と知らない社長では、初年度だけで数百万円の差がついてしまうことがあるのです。

初年度に損金算入できる5つの費用

では、具体的にどんな費用が対象になるのか。一つひとつ見ていきましょう。

① 不動産取得税

物件取得から数ヶ月後に都道府県から送られてくる税金です。金額は物件の評価額や用途によって変わりますが、1,000万円台の費用になることも珍しくありません。法人名義であれば事業経費として損金算入できます。

② 登録免許税

所有権移転登記や抵当権設定登記の際にかかる国税です。物件規模によっては数百万円になります。個人でも費用ではありますが、法人の場合は費用処理の選択肢が広がります。

③ ローン融資手数料

金融機関に支払う融資事務手数料や保証料は、法人では損金算入の対象として扱えます。個人でも費用ではありますが、融資の取得費に含まれてしまうケースが多く、すぐに経費化しづらいのが実情です。

④ 初年度の減価償却費

これは個人でも適用されますが、法人の場合は定率法を選べるため、初年度に計上できる減価償却費が大きくなります。特に建物比率が高い物件では、個人の定額法と比べて倍近い差が出ることもあります。

⑤ 火災保険料

長期一括払いの場合は契約期間で按分が必要ですが、1年分の保険料であれば全額損金算入が可能です。初年度にまとめて計上できる費用として侮れません。

3億円の物件で試算してみると

「で、実際どれくらい節税になるの?」——よく聞かれます。具体的な数字でお伝えしましょう。

3億円規模の収益物件を法人で購入した場合、初年度に損金算入できる費用の合計はおよそ1,800万円になることがあります。不動産取得税・登録免許税・融資手数料などの諸費用で500〜600万円、初年度の減価償却費で1,000万円超——これを積み上げると1,800万円という数字が見えてきます。

法人実効税率をおよそ34%として計算すると、節税効果は約600万円。同じ物件を買うだけで、個人と法人では初年度の手残りが600万円変わるというのが、「法人化で年600万節税」という言葉の根拠です。

見落としがちな注意点

ただし、これはあくまで「条件がうまくはまったケース」の話です。

物件の取得タイミングが決算期の直前になると、初年度に計上できる減価償却費は数ヶ月分だけになります。初年度の節税効果を最大化するなら、決算から逆算した取得スケジュールを立てることが欠かせません。

また、どんな法人スキームで取得するか——既存の事業法人か、資産管理会社か、新設法人か——によっても、実際に使える経費の種類と金額は変わります。融資手数料の損金算入については税務調査で争われるケースもゼロではないため、事前に顧問税理士と方針を確認しておくことが重要です。

動くなら、早いほど選択肢が広がる

不動産の法人化は「いつかやろう」と先延ばしにされがちなテーマです。でも、初年度の節税効果はその年にしか得られません。取得タイミングを決算に合わせて逆算すると、実は半年前から準備を始めないと間に合わないことも多いです。

融資の打診も、法人スキームが決まっていないと金融機関に話を持っていけません。まずは「どの法人で買うか」だけでも今期中に決めておくことをおすすめします。スキームが固まれば、あとは動くだけです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。