先日、資産家の2代目社長からこんな相談を受けました。「父が持っている賃貸マンションを引き継ぎたいんだけど、相続税がとにかく重くて、最悪売らなきゃいけないかもしれない」と。

路線価ベースで評価しても数億円の物件。相続税率をかければ、用意できる現金の上限を優に超えてしまいます。でも実は、ある3ステップを踏むことで、この重税を劇的に圧縮できる可能性があるんです。

不動産を「株式」に変えることが、節税の核心

まず結論からお伝えします。不動産承継における最強の節税策は、不動産を法人へ移転し、「株式」という形で引き継がせるという手法です。

なぜ株式にすると有利なのか。

個人が不動産を保有していると、相続税の評価は路線価や固定資産税評価額が基準になります。一方、同族会社の株式は「取引相場のない株式」として別の算式で評価されるため、場合によっては不動産そのものより評価額が2〜3割低くなることがあります。

資産規模が数億円を超えると、その差は数千万円単位になることも珍しくありません。これが、法人移転スキームが富裕層の間で注目されている理由です。

3ステップで進める不動産承継

ステップ1:不動産管理法人を設立する

まず、不動産を保有・管理するための法人を新設します。同族会社として設立するのが一般的で、オーナー自身や後継者が株主になります。この段階で「将来、誰に何株渡すか」という設計まで考えておくと、後のステップがスムーズになります。

ステップ2:法人へ不動産を移転する

個人名義の不動産を、設立した法人へ売却または現物出資の形で移します。この時点で不動産は「法人の資産」になり、個人の相続財産は「法人株式」に切り替わります。まさにここが、節税スキームの核心部分です。

ステップ3:株式を後継者へ計画的に承継する

法人株式を後継者(子どもや親族)へ贈与または相続させます。ここで威力を発揮するのが、事業承継税制の特例措置です。この制度を適切に活用すれば、贈与税・相続税が最大100%猶予されます。申請期限は2027年12月末。まだ間に合うウィンドウが残っています。

「税ゼロ」を語る前に知っておくべきこと

一点、重要な留意点をお伝えします。

「相続税ゼロ」とは、あくまでも相続税・贈与税の部分の話です。ステップ2で個人から法人へ不動産を移す際には、不動産取得税と登録免許税が必ず発生します。物件規模によってはこれだけで数百万円になることもあります。

さらに、個人から法人へ「売却」形式で移転する場合は、売却益に対して譲渡所得税がかかるケースもあります。

つまり、「スキーム全体でいくらかかり、いくら節約できるのか」を事前にシミュレーションすることが絶対条件です。相続税は減らせても、移転コストがそれを上回ってしまっては本末転倒になります。

「いつ動くか」が、節税の勝敗を分ける

このスキームを実行するうえで、タイミングが最も重要です。

事業承継税制の特例措置には2027年12月末という申請期限があります。法人設立から株式承継まで順番通りに進めると、早くても1〜2年はかかります。相続が先に発生してからでは、この制度は使えません。

「そのうち考えよう」ではなく、「今すぐ動き始める」ことが節税の大前提です。個人名義の不動産を持っているオーナー経営者の方は、一度専門家に現状の評価額と承継コストのシミュレーションを依頼してみてください。想定外の節税余地が見つかるかもしれません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。