「先生、去年買ったタワマン、節税に使えなくなったって本当ですか?」
先日、都内に不動産を複数持つ50代の社長から、こんな連絡が届きました。声に焦りがにじんでいるのがわかりました。
2026年現在、不動産を使った節税スキームは急速に「封じられて」います。相続対策や法人活用を考えている方は、今すぐ自分の状況を見直す必要があります。今日は、知らないと痛い目を見る3つの変更点をまとめてお伝えします。
タワマン節税は、もう過去のスキームです
長年、富裕層の相続対策として活用されてきたタワーマンション節税。「時価3億円のマンションが、相続税評価では5000万円」という話を聞いたことがある方も多いでしょう。
ところが、2024年1月に施行されたマンション評価通達の改正によって、このスキームは事実上封じられました。改正の要点はシンプルです。相続税評価額が時価の60%未満になる場合、強制的に60%まで引き上げるというルールが導入されたのです。
たとえば時価2億円のタワマンがあったとして、従来は評価額が2000万円になることもありました。しかし今後は、最低でも1億2000万円(60%)以上の評価がつきます。「低く評価させて節税する」という仕組みの根幹が崩れたわけです。
すでに相続税対策でタワマンを持っている方は、シミュレーションをし直す必要があります。想定していた節税効果が半分以下になっていることも、珍しくありません。
法人で不動産を買うなら「3年縛り」を知っておく
次に、法人を使った不動産節税でよくある落とし穴です。
「個人より法人名義にしたほうが相続対策になる」と聞いて、法人名義で不動産を取得するケースがあります。たしかに長期的には有効な場合もあります。ただし、見落とされがちな重要なルールがあります。
法人が取得してから3年以内の不動産は、相続税評価が時価で計算されるのです。つまり、「買った翌年に相続が発生した」「購入直後にオーナーが倒れた」という状況では、節税効果がゼロになります。路線価や固定資産税評価額ではなく、実勢の時価で課税されてしまうのです。
よくあるのが、「急いで対策したい」という動機で法人名義に移してしまうケース。焦りが裏目に出る典型例です。法人による不動産取得を相続対策に活用するなら、少なくとも3年以上の余裕を持った計画が前提になります。短期的な処方箋にはならない点を、頭に入れておいてください。
インボイス制度が、じわじわと不動産コストを上げている
3つ目は、見落とされやすい「コスト面」の変化です。
2026年10月から、免税事業者(年間売上1000万円以下の個人事業主など)への支払いに対する仕入税額控除が、80%から50%に引き下げられます。これが不動産にどう関係するのか。
賃貸物件の管理会社、清掃業者、小規模な修繕業者——こうした業者の多くは、消費税の免税事業者です。これらへの支払いにかかる消費税を、以前ほど控除できなくなる、ということです。
具体的には、月50万円の管理委託費があったとすると、消費税5万円のうち控除できる金額が今後は2.5万円(50%)に絞られます。年間にすれば30万円規模のコスト増になることもあります。「不動産は固定費だから安心」と思っていると、このじわじわしたコスト上昇に気づかないまま、収益性が下がっていきます。
取引先が免税事業者かどうか、改めて確認しておくことをおすすめします。
今、何をすべきか
この3つの変化をまとめると、チェックすべき点は明確です。
タワマンを相続対策で持っている方は評価額を再計算する。法人で不動産を買って間もない方は3年ルールの影響を確認する。管理費・修繕費の取引先を把握していない方はインボイス対応状況を整理する。
どれも「知っていれば事前に対処できる」内容です。不動産節税は、一度設計したら終わりではなく、税制の変化に合わせて定期的に見直すものです。「去年の対策」が今年も通用するとは限りません。
もし自分の状況が上記に当てはまるようなら、早めに税理士に状況を共有することをおすすめします。変更が必要な場合でも、早く動くほど選択肢が増えます。今期中に一度、不動産の相続・節税設計を棚卸しする時間を作ってみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。