先日、複数の不動産を法人で保有している製造業の社長からこんな連絡をもらいました。

「三原さん、固定資産税ってそのまま払うしかないですよね?」

毎年4〜6月に届く固定資産税の納税通知書。おそらく多くの社長が、届いたその日に「また来た」と思いながらそのまま納付しているはずです。でも実は、その通知書に書かれた評価額が「間違っている」ケースが思いのほか多い。そして、それを指摘する仕組みがちゃんと存在します。

評価額の「計算ミス」は珍しくない

固定資産税は、市区町村が土地・建物を評価した「固定資産評価額」をもとに計算されます。この評価は3年に1度(評価替え)が基本ですが、評価替えのタイミングで更新漏れや計算ミスが起きることがあります。

特に起きやすいのが、経年による価値の下落(経年減価)が評価額に反映されていないケース、あるいは増改築や一部取り壊しの後に評価が正しく更新されていないケースです。建物は使えば使うほど価値が下がるはずなのに、役所の台帳がそれを追いかけていないことがある。

法人で複数の物件を保有している社長であれば、1棟あたりの差額が数万円でも、物件数をかければ年間で数十万〜100万円規模の過払いになっていることもあります。毎年払い続けていると思うと、見過ごせない金額です。

役所が教えてくれない「審査申出」という制度

こうした評価額の誤りを正すための制度が「固定資産評価審査委員会への審査申出」です。

仕組みはシンプルで、納税通知書が届いた日から3か月以内に審査申出書を提出すれば、評価額の見直しを正式に請求できます。役所が一方的に決めた評価額に対して、納税者が「この金額は高すぎる」と異議を申し立てる権利です。

「そんな制度があるなら教えてくれるはずでは?」と思うかもしれません。ところが実際には、ほとんど周知されていません。申し出られると役所側の審査事務が発生するため、積極的に案内するインセンティブがないのです。知っている人だけが使える、言わば「黙っていると損する制度」です。

4〜5月の縦覧期間が勝負どころ

審査申出を効果的に進めるには、「評価額が本当に高すぎるのか」という客観的な根拠が必要です。そこで活用したいのが、毎年4月から5月にかけての「縦覧期間」です。

縦覧期間中は、市区町村の窓口で土地・建物の評価額の一覧を閲覧できます。近隣の類似物件と自分の物件の評価額を見比べることで、「うちだけ明らかに高い」という具体的な根拠を掴めます。

感覚ではなく数字で根拠を示すことが、審査で認められるかどうかの分かれ目になります。縦覧期間にひと手間かけておくかどうかが、その後の成否を大きく左右します。

次の評価替えが来る前の今が絶好機

固定資産の評価替えは3年に1度のサイクルで行われており、次回は2027年度を予定しています。

今年(2026年度)は評価替えの「谷間」にあたります。今使われている評価額は2024年度に決まったものです。もし誤りがあれば、2024年・2025年・2026年と3年分の過払いが積み上がっている可能性があります。

審査申出によって評価額の誤りが認められれば、過払い分が還付されるケースもあります。「今年の話だけ」ではないのです。次の評価替えが来る前に動くことで、取り戻せる金額を最大化できます。

まず今年の通知書を引っ張り出してみてください

最初にやるべきことは、今年届いた固定資産税の納税通知書を確認することです。物件ごとの評価額が記載されているので、「経年減価がきちんと反映されているか」「増改築後の評価が更新されているか」を見てみてください。

とはいえ、評価額の妥当性を自分で判断するのは容易ではありません。縦覧期間に窓口へ足を運ぶのも、忙しい社長には手間です。固定資産税に詳しい税理士に相談すれば、「申し出る価値があるかどうか」を素早く判断してもらえます。費用対効果を見極めた上で動けるので、まずは専門家への相談が近道です。

3か月というタイムリミットは意外と短い。通知書が届いたらすぐに動くことが、取り戻せるかどうかの分かれ道になります。法人で不動産を持っている社長は、今年の通知書をぜひもう一度確認してみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。