「不動産節税は改正で封じられた」——そう聞いて、この話題を避けている社長はいませんか?
先日、年商3億ほどの建設会社を経営する社長と話す機会がありました。「2024年の税制改正でタワマン節税が規制されましたよね。うちも不動産での節税はもう難しいと思って、別の方法を探しているんですが」と、少し諦め顔でおっしゃっていました。
この誤解、本当に多いんです。結論から言うと、法人での収益不動産を使った課税繰延スキームは今も完全合法で機能しています。 毎年1000万単位の課税を繰り延べられる可能性があるにもかかわらず、「改正で使えなくなった」という思い込みで手を止めてしまっているとしたら、非常にもったいない話です。
2024年改正が規制したのは「相続税のここだけ」
まず、今回の改正で何が変わったのかを整理しておきましょう。
2024年の税制改正が対象としたのは、主にタワーマンション等の相続税評価の歪みに対する規制です。高層階の市場価格と相続税評価額の乖離を使って相続税を大幅に圧縮する手法が、事実上封じられました。
これはあくまでも「相続税」の話であり、「個人が高額マンションを買って相続財産を圧縮する」という特定の手法への規制です。
一方、法人が収益不動産を取得して減価償却を活用する課税繰延スキームは、この改正の対象外です。法人税の話なので、そもそも別の制度が適用されます。にもかかわらず「不動産節税=規制された」というイメージだけが広がってしまっている。これが今、多くの社長が機会損失を抱えている原因のひとつです。
2億円の物件で年1000万超の課税を繰り延べる
少し具体的な話をしましょう。
たとえば法人で2億円規模の中古収益物件を取得するケースを考えます。木造で築20年超の物件であれば、耐用年数の残りが短く、減価償却費を大きく計上できます。これにより帳簿上の利益が大幅に圧縮され、課税対象となる所得を減らすことができます。
実効税率33%のケースで試算すると、年間1000万円を超える課税繰延が可能になることがあります。「節税」というより「課税を将来に先送りする」イメージが正確ですが、今期のキャッシュアウトを減らして次の投資や経営に回せる——この効果は非常に大きいです。
さらに、役員社宅制度と組み合わせると効果はもう一段高まります。法人が取得した不動産を役員に賃貸する形を取ることで、家賃の大部分を法人経費として計上しながら、役員個人の課税も同時に抑えることができます。取得した物件の活用方法として、非常に合理的な設計のひとつです。
落とし穴は必ず「出口」にある
ただし、ここに大きな注意点があります。
課税繰延は「税金を消す」のではなく「後ろに動かす」だけです。物件を売却するときには、それまで繰り延べてきた税が一気にやってきます。これを「売却時の課税集中」と呼び、何も対策しないと、ある年だけ税負担が激増するという事態になります。
これを防ぐには、退職金の計上タイミングや法人清算のスケジュールと組み合わせた出口設計が不可欠です。たとえば、社長が退職するタイミングで物件を売却し、同時に退職金を支払う。退職金は分離課税で税率が低く抑えられるため、物件売却益との組み合わせでトータルの税負担を大きく圧縮することができます。
「入口(取得)」「保有中(減価償却)」「出口(売却・退職)」の3段階を一体で設計できているかどうかが、このスキームの成否を分けます。入口だけ考えて「出口はそのとき考える」という楽観は、後で痛い目を見ることになります。
誤情報のまま放置すると毎年何百万も損し続ける
「改正で使えなくなった」という誤情報によって、本来使えたはずのスキームを放棄してしまっているケースは、実際にかなり多いと感じています。
法人に一定の利益が出ていて「何か手を打ちたい」と思っているなら、一度専門の税理士に「法人で収益不動産を活用できる余地があるか」を相談してみてください。税制改正のたびに「もう使えない」と諦めるのではなく、「今何が使えて、何が使えなくなったのか」を正確に確認する習慣が、長期的な節税戦略には欠かせません。
改正の影響を正しく理解するだけで、見えてくる選択肢はぐっと広がります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。