先日、建設業を営む社長とお茶をしていたとき、こんな言葉が出てきました。「自社で物件を持っているのに、節税になっているのかどうかよくわからなくて」と。

年商数億円の会社を経営しているのに、手元に残るお金が少ない。税金を払いすぎているかもしれないのに、具体的な手が打てていない——そんな状況は、実は珍しくありません。

法人で不動産を「持つ・借りる・活用する」という3つの切り口だけで、かなりの節税が可能です。ところが、この3つを全部使えている社長は3割程度というデータもあります。今回は、税務署からは教えてもらえないその3つをお伝えします。

建物の減価償却で、毎年「見えない経費」を作り出す

法人で建物を取得すると、その取得費用を減価償却費として毎年経費に落とせます。キャッシュは出ていかないのに「経費」として計上できる——これが減価償却の最大のメリットです。

3,000万円の木造物件を購入した場合、法定耐用年数22年の定額法で計算すると、年間約136万円の減価償却費が発生します。実効税率30%なら、それだけで年間約40万円の節税効果です。10年間では400万円の節税になる計算ですから、無視できる金額ではありません。

注意点は、減価償却の対象は建物部分のみで、土地には適用されないという点です。購入時の契約書や固定資産税評価額をもとに、建物と土地の按分をきちんと把握しておきましょう。「なんとなく持っている」では、この経費を正確に計上できていないこともあります。

役員社宅制度で、社長の所得税・住民税を下げる

次に紹介したいのが「役員社宅制度」です。会社が物件を取得または賃借して、社長に貸し出す仕組みです。

社長が会社に支払う家賃は、国税庁が定めた通達に基づく「賃貸料相当額」だけでOKです。市場家賃との差額分は会社の経費として処理でき、しかも社長側には給与課税されません。つまり、所得税・住民税の節税にも直結します。

月30万円の物件に住む場合、賃貸料相当額が月5万円程度であれば、差額の25万円が会社経費になります。年間300万円の経費計上です。個人で高額の家賃を手取りから払っている社長は、ここで大きな差がつきます。

ただし、「豪華社宅」に該当すると別の計算ルールが適用される点は要注意です。また、会社の実態に合った運用であることが前提になります。制度の設計は必ず税理士と一緒に確認してください。

不動産は、相続税評価額が現金より格段に低くなる

3つ目は、将来を見据えた相続対策の視点です。

現金や預貯金は額面どおりに相続税が課税されますが、不動産の相続税評価額は一般的に時価の6〜8割程度です。さらに、賃貸に出している場合は「貸家建付地」として評価がさらに下がり、2〜3割程度の圧縮になることもあります。

時価1億円の物件の評価額が6,000万円になれば、差額の4,000万円分が課税対象から外れます。現金で資産を積み上げている経営者ほど、不動産への組み換えが相続対策の有力な選択肢になります。

法人名義で不動産を持つ場合は株式評価を経由した影響になりますが、適切に設計すれば有効な対策になります。「自分はまだ先の話」と思っている方ほど、早めに専門家と設計しておくことをおすすめします。

この3つ、全部使えていますか?

減価償却・役員社宅・相続税圧縮——この3つは、法律・税務通達の範囲内で認められた合法的な節税策です。「知っているかどうか」だけで、手元に残るお金が大きく変わります。

ある調査では、この3つをすべて活用できている社長は3割程度。7割近くの経営者がまだ使えていないということです。裏を返せば、ほとんどの競合より有利なポジションに立てるチャンスでもあります。

「なんとなく個人名義で物件を持っている」「自社ビルはあるが節税になっているかわからない」という方は、まず税理士に現状を棚卸ししてもらうところから始めてみてください。決算が終わってからではなく、期中に動き出すのがポイントです。今期の決算対策として、不動産の活用を一度見直してみましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。