先月、ある不動産オーナー社長からこんな連絡が入りました。「今まで毎年不動産を贈与してきたんだけど、7年ルールって何?うちは損してるの?」
正直に言うと、かなり損している可能性があります。2024年の税制改正で、生前贈与の相続加算期間が3年から7年に延長されました。これが、じわじわと多くの社長の「当たり前の節税」を侵食しています。
ただ、焦る必要はありません。改正後も有効なスキームは残っています。今日はその中でも特に使い勝手がいい3つをご紹介します。
法人で不動産を取得して、建物を毎年経費化する
個人で不動産を持つか、法人で持つか。資産家・経営者にとって永遠のテーマですが、2026年の現時点では法人取得の優位性が増しています。
理由はシンプルで、建物を法人の固定資産として減価償却できるからです。5,000万円の物件(うち建物部分が3,000万円と仮定)を法人で取得した場合、法定耐用年数に応じて毎年100〜250万円ほどを経費として計上できます。
法人の実効税率を30%とすると、年間30〜75万円の節税です。10年で見れば300〜750万円の差が出る計算になります。特別な手間をかけなくても、保有しているだけで毎年税負担が下がっていく点が魅力です。
もちろん法人化には設立費用や維持コストもかかります。ただ、ある程度の資産規模があれば十分ペイします。
役員社宅で、住宅費を実質的に法人負担にする
「自分の家の家賃を会社に払ってもらう」——こう聞くと怪しく感じるかもしれませんが、これは税務上まったく合法の制度です。
仕組みは、会社が物件を借り上げ(または購入)し、役員に社宅として転貸するというもの。役員は法令で定められた「賃料相当額の一部」を会社に払うだけでよく、差額は法人の経費になります。
一般的なマンションであれば、自己負担は家賃の10〜20%程度で済むケースが多いです。月30万円の家賃なら、毎月24〜27万円が法人経費になるイメージです。年間換算で300万円前後の経費化は、個人の所得税率との差を考えると相当なインパクトがあります。
役員報酬を下げながら社宅を使うと、社会保険料の節減にもつながるので、二重に効いてきます。
路線価評価を使って、相続税の評価額を圧縮する
相続税の計算では、不動産は「路線価」という国税庁が定めた基準で評価されます。市場価格ではなく路線価を使うため、一般的に実勢価格の70〜80%程度の評価になります。
1億円の不動産でも、相続税の計算上は7,000〜8,000万円として扱われることが多い。さらに賃貸に出している場合は「貸家建付地」として評価がさらに下がり、場合によっては実勢価格の50〜60%台になることもあります。
生前贈与の加算期間が7年に延びたことで「毎年少しずつ贈与する」戦略は使いにくくなりましたが、「評価額が圧縮された不動産として資産を持つ」戦略はそのまま有効です。特に都市部の収益物件は評価差が出やすいため、相続対策として積極的に活用できます。
旧スキームのまま動いている社長が、気づかず損をしている
今も「毎年110万円の贈与をしているから安心」と思っている社長は少なくありません。しかし7年ルールの下では、亡くなる7年前まで遡って相続財産に加算されます。10年かけて積み上げた贈与のうち、7割近くが引き戻される計算になります。
改正の全体像を把握せずに旧来の手法を続けることのリスクは、思った以上に大きいのです。特に60代以上で、これまで贈与中心の相続対策を取ってきた社長は、今すぐ現状のスキームを棚卸しする必要があります。
法人への不動産移転、役員社宅の導入、路線価を活用した収益物件取得——この3つはどれも、今の税制下でしっかり機能します。「まだ何も手を打てていない」という方は、まず顧問税理士に現在のスキームを確認してもらうことから始めてみてください。改正後の環境に合った設計に見直すだけで、将来の税負担は大きく変わります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。