先日、顧問先の社長からこんな相談を受けました。「年収1500万円あるのに、なぜかお金が全然貯まらないんですよね」。

話を聞いてみると、役員報酬はすべて現金で受け取り、個人名義で毎月15万円の家賃を払いながら都内のマンションに住んでいる。この状況、実はかなりもったいない受け取り方をしています。

今回は、その社長に実際にお話しした「社宅化」の仕組みをご紹介します。タイミングと組み合わせ次第で、手取りが年間100万〜200万円単位で変わることがあります。

役員報酬を「現金一本」で受け取るのは、最もコスパが悪い

役員報酬は、受け取り方によって手残りが大きく変わります。現金だけで受け取ると、所得税・住民税・社会保険料がフルにかかります。所得税率33%の課税区分に入っていれば、100万円の報酬を受け取っても手元に残るのは55〜60万円程度です。

残りはどこへ消えているのか。税と社会保険料です。この「見えないコスト」を合法的に圧縮する方法が、社宅化という仕組みです。

社宅化の仕組みを数字で見てみると

月家賃15万円のマンションを、個人名義から法人契約に切り替えて「社宅」として使います。このとき、役員個人が会社に支払う賃料は、国税庁が定めた計算式(小規模住宅の場合)に基づいて算出されます。

この計算式で出てくる金額は、一般的に月1万〜2万円程度になることが多いです。つまり、家賃15万円の住居に月1〜2万円の自己負担で住めることになります。差額13万円超は会社の経費として計上できる。これが社宅化の核心です。

年間にすると、約150万〜160万円の経費が新たに生まれます。

「報酬を下げる」とセットで使うのがポイント

経費が増えるだけでは、節税効果は会社側にしか出ません。ここで重要なのが、「役員報酬をその分だけ下げる」という組み合わせです。

社宅として現物で受け取る分を報酬から引いても、生活水準は変わらない。この発想が出発点です。

報酬を150万円下げると何が起きるか。所得税・住民税・社会保険料の計算基礎が150万円減ります。所得税率33%の社長なら、所得税だけで年間50万〜70万円の削減になります。さらに社会保険料(健康保険+厚生年金)の削減も加わると、合計で年間100万〜200万円の手取り改善につながるケースがあります。

「住宅手当」との違いを押さえておく

誤解が多いのですが、会社から「住宅手当」として現金をもらうのは、社宅化とはまったく別物です。住宅手当は現金収入として給与扱いになり、税・社保がフルにかかります。

社宅化は、会社が直接家主と賃貸借契約を結び、役員が会社から転貸を受ける形をとります。この構造が重要で、実態が伴っていないと税務署に否認されるリスクがあります。実務上のポイントをざっくりまとめると:

  • 法人が大家と直接賃貸借契約を結ぶ(途中で個人名義から切り替える場合は敷金等の精算が必要)
  • 役員が会社に対して適正な賃料を必ず支払う(無償提供は課税対象になります)
  • 「小規模住宅」か「豪華社宅」かで計算式が異なる(床面積が判定基準になります)

年200万増は「最大ケース」です

正直にお伝えすると、年200万円という数字は、税率が高い課税区分の社長が家賃水準の高い住居を社宅化した場合の試算上の上限に近い数字です。所得税率が低い方や、もともと報酬水準が低い方は、効果が限定的になることもあります。

また、会社の利益水準によっては、経費が増えても法人税の恩恵を受けにくいケースもあります。個別の試算は必ず税理士と一緒に行ってください。

今、個人名義で家賃を払っているなら、すぐ動く価値あり

特に設立から数年が経ち、報酬水準が上がってきた社長は、見直しのタイミングです。社宅化は複雑な仕組みではありませんが、賃貸借契約のやり直しや社内規程の整備が必要なため、早めに動くほど節税期間を長く取れます。

「報酬は現金でもらうもの」という固定観念を一度外してみると、意外なところに大きな手残りが眠っていることがあります。顧問税理士にまだ相談していないなら、今期中に一度試算を依頼してみることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。