先日、年商3億円ほどの建設会社の社長とお話しする機会がありました。

「うちの税理士、毎年おなじような提案しかしてくれないんですよね」と苦笑いしながら話してくれたのですが、詳しく聞いてみると、法人で不動産を活用する節税の話を一度も受けたことがないというのです。

これ、かなりもったいないんです。法人と不動産の組み合わせには、個人では到底できない節税スキームが少なくとも3つあります。うまく組み合わせると、年間500万円を超える節税につながった事例もあるほどです。今日はその3つを順番にお伝えします。

役員社宅で家賃を丸ごと経費にする

まず手軽に取り組めるのが「役員社宅」の活用です。

仕組みはシンプルで、会社が物件を借り上げて、役員にそこへ住んでもらいます。役員は税法上の「賃貸料相当額」だけを会社に支払い、残りの差額は全額会社の経費として落とせます。

たとえば月20万円の物件を会社が借り上げた場合、役員の負担額は計算式によって4〜5万円程度になることが多いです。差額の15万円超が毎月経費になる計算なので、年間で180万円近い節税効果が生まれます。

注意点は、役員が負担すべき賃貸料相当額を正しく計算する必要があること。ここを省いてゼロ円にしてしまうと、全額が給与として課税されてしまいます。税理士としっかり計算を詰めてから導入してください。

減価償却で毎年「確実に」経費を積み上げる

法人が不動産を購入すると、毎年「減価償却費」という経費を計上できます。地味に見えますが、これが相当強力です。

RC造(鉄筋コンクリート)の1億円の建物を取得した場合を例に挙げると、耐用年数47年の定額法で計算すると年間の減価償却費はおよそ220万円になります。法人税の実効税率が33%なら、このスキームだけで年73万円前後の節税効果です。

しかもこれは、売上が増えなくても、特別な手続きをしなくても、毎年自動的に経費として積み上がります。土地は減価償却できないため、建物部分の割合が大きい物件を選ぶのがポイントです。購入前には必ず収支シミュレーションを行い、キャッシュフローが成り立つかを確認しましょう。

株式評価を下げて相続税を圧縮する

3つ目は少し時間軸の長い話ですが、将来の相続を見据えると非常に重要なスキームです。

法人が不動産を保有すると、その会社の株式評価額を圧縮する効果があります。理由は、土地が「路線価」で評価されるからです。路線価は時価のおよそ80%が目安とされており、建物も「固定資産税評価額」で評価されるため、時価より低くなります。

つまり、1億円の不動産を法人に持たせると、相続税の計算上は7,000〜8,000万円程度の評価に圧縮されるケースがあります。この差額分だけ、相続税の課税対象から外れるわけです。オーナー社長にとっては、法人株式の相続対策と不動産節税を同時に実現できる点が最大の魅力です。

3つ組み合わせると何が起きるか

これらのスキームは単体でも効果がありますが、組み合わせると相乗効果が出ます。

役員社宅で経費を増やしながら、同じ建物の減価償却を取り、将来の相続に向けて株式評価も下げる。こうした複合的な設計ができると、年間500万円を超える節税が実現するケースがあります。

ただし「会社で不動産を持つ」ことが前提なので、購入タイミングや資金調達の問題も絡んできます。まずは自社の決算書を持って、不動産に詳しい税理士に話を聞いてみるのが最初の一歩です。法人不動産の節税は、まだ手を付けていない会社にとってはブルーオーシャンです。今期の決算を迎える前に、ぜひ一度プロの意見を求めてみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。