先日、資産10億円超の建設会社を経営する60代の社長から、こんな相談を受けました。
「相続のことと、息子への承継のこと、どちらも気になっているんだけど、どこから手をつければいいかわからなくて」
この悩み、実はひとつの設計で丸ごと解決できます。多くの社長が「相続対策」と「事業承継」を別々の問題として捉えているのですが、同時に解決できる手法があるんです。
社長を悩ませる「2つの課題」の正体
会社が成長すればするほど、自社株の評価額は上がります。その株を相続するとき、複数の相続人に分散してしまうと、経営の意思決定が混乱します。「発言権を持つ相続人が増えすぎて、身動きが取れなくなった」という話は珍しくありません。
そして事業承継の問題。後継者への株の引き渡しを先送りにしているうちに、社長に万一のことがあったとき、会社が一気に混乱するリスクがあります。「いつか準備しよう」が命取りになるケースです。
この2つを別々に対策しようとすると、専門家も費用も時間も2倍かかります。しかし実は、一つの資産設計でまとめて解決できる方法があります。
法人が不動産を持つと、何が起きるのか
シンプルに説明しましょう。
会社が不動産を購入すると、その資産が株式の相続税評価額を引き下げる効果があります。不動産の相続税評価は路線価や固定資産税評価額が基準になるため、実際の市場価格より2〜3割低く評価されるケースが多いのです。
例えば現金3億円を法人名義の収益不動産に変えた場合、帳簿価額は3億円でも、相続税計算上の評価額は2億円台になることがあります。この差が、そのまま株式評価の圧縮につながります。
評価が下がった状態で後継者に株を承継すれば、贈与税や相続税の負担も小さくなります。相続と承継、2つの問題が一つの資産移動でまとめて解決される——これが法人不動産戦略の核心です。
2027年12月末という「見えない締め切り」
ここで知っておかなければならない重要な期限があります。
事業承継税制の特例措置です。後継者への株式承継に際し、贈与税・相続税の納税を猶予・免除できるこの制度、適用を受けるには2027年12月31日までに「特例承継計画」を都道府県に提出する必要があります。
あと1年半ほど。法人不動産の購入から評価額の安定・株式の移転まで、準備には相応の時間がかかります。「まだ先の話」と思っていると、気づいたときには間に合わない、という事態になりかねません。
注意点:不動産なら何でもいいわけではない
ひとつ、誤解しやすい点を補足しておきます。
節税目的だけで不動産を購入しても、税務調査で否認されるリスクがあります。「事業上の合理性があること」が大前提です。賃料収入の見通し、ローン返済と資金繰りのバランス、物件の将来価値——これらを総合的に検討した上で購入するのが正しい順序です。
節税は「設計の結果としてついてくるもの」であり、目的にしてしまうと判断を誤ります。この感覚を持っているかどうかで、相談する税理士の質も変わってきます。
動くなら、今期中に
相続と承継を「いつかまとめて考えよう」と後回しにしている社長ほど、時間を味方につけるチャンスを失っています。
まず顧問税理士に「不動産を使って株価を下げながら後継者に承継する設計を一緒に考えたい」と伝えてみてください。その一言から、具体的な動きが始まります。2027年末の特例期限を考えれば、相談を始めるのは早ければ早いほど選択肢が広がります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。