先日、年商2億円の不動産会社を経営している社長から、こんな相談を受けました。「顧問税理士もいるし、経費はちゃんと落としているつもりなんですけど……なぜか毎年税金が重くて」。
話を聞いていくうちに、ある事実が浮かび上がってきました。自宅は個人契約のまま、出張日当規程は未整備、物件視察の交通費は自腹——。適切に処理すれば法人経費になるはずのお金が、毎年200万円近く「なかったこと」になっていたのです。
「知らなかった」で済んでしまうのが、この種の見落としの怖いところです。今日は、中小企業の社長が特に見落としやすい5つの経費を、順番に整理してみます。
役員社宅|家賃の大半を法人経費にする仕組み
役員社宅とは、会社が物件を法人名義で借り上げ、社長に貸し出す制度です。社長は国税庁の通達に基づいて算出した「賃料相当額」だけを会社に払えば、残りの家賃は全額法人経費になります。
賃料相当額は、物件の固定資産税評価額をもとにした計算式で算出します。家賃20万円のマンションでも、賃料相当額が3〜5万円程度に収まるケースは少なくありません。差額の15万円が毎月経費になれば、年間180万円のインパクトです。
ただし「法人名義での賃貸契約」と「社宅規程の整備」が前提です。個人契約のままで経費にしようとすると、税務調査で即否認されます。
出張日当規程|受け取る側も会社側も得をする
出張日当は、社内規程に金額を定めておくだけで、出張のたびに非課税で受け取れる仕組みです。日当は給与扱いではないため、受け取った側に所得税がかかりません。一方、会社側では経費計上できます。
不動産オーナー系の社長であれば、月に数回の物件視察が発生しますよね。視察のたびに日当が出れば、年間20〜40万円の非課税収入になります。出張日当規程を一度整備してしまえば、あとは粛々と活用するだけです。
不動産調査費・物件視察の交通費
「結局、買わなかった物件だから経費にならないだろう」と思っている社長が多いのですが、これは誤解です。購入の検討段階から発生する調査費用や交通費は、事業に関連する支出として法人経費に計上できます。
必要なのは記録を残すことだけ。視察日・場所・検討した理由をメモしておけば十分です。「なぜその物件を見に行ったか」を説明できる状態にしておくことが、税務調査対策の基本になります。
セミナー・研修参加費|「勉強代」を会社で落とす
事業に関連するセミナーや研修の参加費は、法人経費として計上できます。不動産投資系・税務・資金調達・マーケティングなど、業務との関連が説明できるものであれば問題ありません。
参加費だけでなく、懇親会費や往復の交通費・宿泊費も含めると、年間でそれなりの金額になります。「どうせ個人の勉強だから」と自腹にしてしまっているなら、一度見直す価値があります。
5つ合わせると、年200万円の差が生まれる
一つひとつの金額は大きくなくても、5つを積み上げると年間200万円の経費増は十分に現実的です。実効税率が30%なら、それだけで約60万円の手取りが変わります。5年で300万円です。
とはいえ、これらはすべて「適切に設計すれば合法」という前提があります。裏を返せば、設計を誤ると税務否認のリスクもあります。特に役員社宅と出張日当は、規程が不十分だと「給与」と認定され、追徴課税につながることがあります。
「なんとなくやっている」ではなく、「規程を整備した上で正しく運用している」状態が大切です。
今期の着地が見えてきたタイミングで、一度税理士と一緒にチェックリストを回してみてください。「やっているつもり」の穴が、意外なところに空いているかもしれません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。