先日、都内でマンションを3棟持つ社長からこんな相談を受けました。

「不動産収入もそこそこあるんですが、なんか毎年税金がきつくて……」

話を聞いてみると、すべて個人名義で運用されていました。これは、かなりもったいない状況です。

個人課税の「落とし穴」

個人で不動産投資をすると、家賃収入などの不動産所得は給与所得と合算して課税されます。これを「総合課税」といいます。

問題は、給与が高い社長ほど痛手が大きいという点です。役員報酬が高水準であれば、不動産所得が上乗せされた瞬間に、最高で所得税と住民税を合わせた実効税率が55%に達することもあります。

つまり、不動産で1,000万円稼いでも、その半分以上が税金として消えていくわけです。

法人だと何が変わるのか

同じ1,000万円の不動産所得でも、法人が受け取る場合はまったく異なります。法人の実効税率はおおむね22〜34%の範囲に収まります。

具体的に比較してみましょう。

年間不動産所得が1,000万円のケースで考えます。個人で受け取る場合の税負担は、他の所得との合算もあって約430万円ほどになることがあります。一方、法人で受け取った場合の税負担は約230万円程度に抑えられます。

その差額は、年間200万円。物件が増えれば増えるほど、この差はさらに広がっていきます。

法人化でさらに使える「三つの武器」

税率差だけが法人化のメリットではありません。実務上、さらに大きな節税効果を生む仕組みが三つあります。

ひとつ目は、経費の計上範囲が広がることです。修繕費、管理委託費、借入利息はもちろん、法人であれば交際費や車両費など、個人では認められにくい支出も合理的な範囲で経費にできます。

ふたつ目は、役員報酬への振替です。法人が得た不動産収入の一部を役員報酬として受け取ることで、給与所得控除が使えます。個人の不動産所得にはない控除です。配偶者や家族への分散も検討できます。

三つ目は、利益の繰り越しと分散です。個人は毎年その年の所得に課税されますが、法人は役員報酬の額を調整することで、利益を翌期以降にコントロールしやすくなります。

「じゃあ今すぐ移せばいい」は早計

ここまで読んで「すぐ法人に移そう」と思った方、少し待ってください。

個人名義の不動産を法人に移す際には、売買という形をとるのが一般的です。このとき、個人側に譲渡所得が発生し、場合によっては相当額の税金がかかります。

また、不動産取得税や登録免許税といったコストも発生します。物件の規模や取得価格、現在の含み益によっては、移転コストが節税効果を上回るケースもあります。

「移すべきか」「いつ移すか」「どの物件から移すか」は、ケースバイケースの判断が必要です。

これから投資するなら「最初から法人で」

すでに個人名義の物件を移すのが難しい場合でも、これから取得する物件は法人で買うという選択が取れます。既存の個人物件はそのままに、新規取得分から法人スキームを始める社長も多くいます。

特に、今後も不動産を増やしていく予定があるなら、早いタイミングで法人の不動産管理体制を整えておくことが長期的な節税につながります。

個人で不動産投資を続けている社長は、一度「法人に移したらどうなるか」を税理士と試算してみてください。年200万円の差は、10年で2,000万円です。動くなら早いほど複利的な効果が出ます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。