「うちの財産、半分以上が税金で消えるって本当ですか?」
先日、不動産を複数所有する60代の社長からこんな相談を受けました。決算も順調、会社も安定している。でも、いざ相続を試算してみたら——出てきた数字に言葉を失ったそうです。
相続税の最高税率は55%です。資産が数億円を超えてくると、何も手を打たなければ財産の半分近くが税金に消えます。会社を大きくするために積み上げてきたものが、次の世代にほとんど渡らない。この現実を直視したとき、「対策をしなければ」と感じる経営者は少なくありません。
家族法人という切り札
相続対策として近年注目されているのが、「家族法人」の活用です。ご自身や家族で法人を設立し、そこに不動産を保有させる仕組みです。
なぜこれが節税につながるのか。ポイントは「株式評価」にあります。
個人が不動産を持っている場合、路線価や固定資産税評価額をもとに相続財産を評価します。一方、法人が不動産を保有していると、その価値は株式の評価額に反映されます。株式評価には純資産価額方式や類似業種比準方式などの計算方法が使われるため、土地を個人で持つよりも評価額が下がるケースが多いのです。
「3割圧縮」が現実になる理由
具体的なイメージとして、こんなケースを考えてみましょう。
個人で相続税評価額2億円の不動産を保有している場合、税率を考慮すると相続税の負担は数千万円規模になります。これを家族法人に移し、適切に設計すると評価額を3〜4割減らせることがあります。
さらに、家族を役員として迎えて給与を分散させることで、法人税の節税にもなり、資産の移転もスムーズになります。この二つの効果が重なることで、「3割前後の圧縮」という数字が現実味を帯びてくるのです。
設計を誤ると逆効果になる
ただし、家族法人での相続対策は「やれば必ず得をする」というものではありません。
注意が必要なのが、個人に適用できる「小規模宅地等の特例」です。この特例は自宅や事業用の土地を相続する際に評価額を最大80%も下げられる強力な措置ですが、法人名義の不動産には原則として使えません。
もともとこの特例が使える土地を法人に移してしまうと、かえって評価額が上がってしまうこともあります。また、不動産を法人に移す際には譲渡所得税が発生する可能性もあり、含み益が大きい不動産ほど移転コストも無視できません。
動き始めるなら今が「設計のゴールデンタイム」
家族法人を使った相続対策で最も大切なのは、「早めに設計する」ことです。
法人の設立から不動産の移転、家族役員への給与設定、株式の贈与による分散——これらを積み上げるには最低でも5〜10年のスパンが必要です。70代になってから慌てて動いても、税務上の要件を満たせなかったり、資金移動の実態を問われたりするリスクが高まります。
まだ50代、60代前半の社長であれば、今が動き始める絶好のタイミングです。
相談前に整理しておくと話が早い
相続専門の税理士に相談する際、以下を事前に整理しておくと初回面談から具体的な試算まで進められます。
- 現在の資産構成(不動産・金融資産・自社株のバランス)
- 推定相続税額(試算を依頼するのも一手)
- 後継者や相続人の候補と、その意向
- 法人設立・不動産移転のコストを賄える手元流動性
財産を次世代にきちんと渡すことが目的なら、今から動いておく価値は十分あります。「まずは試算だけでも」という軽いスタンスで、相続専門の税理士に声をかけてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。