先日、顧問先の社長からこんな一言をもらいました。
「毎月25万円の住宅ローンを払ってるんですけど、これって会社の経費にならないですよね?」
なりません——ただし、個人で買っている限りは、の話です。
実は法人名義で自宅を購入し、社長に貸し出すという方法を取れば、話はまったく変わってきます。これが「社宅制度」と呼ばれるもので、うまく使えば年間100万円を超える節税も十分に現実的なんです。
「社宅」にすると何が変わるのか
シンプルに言うと、会社が不動産を買って社長に貸せば、その建物にかかるコストは全部会社の経費になります。
具体的に経費にできるものを挙げると、住宅ローンの利息部分、固定資産税、火災保険料、管理費、そして修繕が必要になったときの費用——こうした出費がすべて損金として計上できます。
個人で家を持っている場合、これらは一切経費になりません。税引き後の手取りから払い続けることになります。そこに大きな差が生まれるわけです。
社長が払う家賃は「市場価格の2割以下」でいい
ここで「でも、会社から借りると高い家賃を払わないといけないんじゃ?」と思う方も多いです。
結論から言えば、それは違います。
社長が会社に支払う家賃は、国税庁が定める**「賃貸料相当額」**という計算式に基づいて決まります。この金額が、一般的な市場家賃と比べてかなり低く設定されているのがポイントです。
目安としては、市場価格の10〜20%程度。仮に周辺相場が月25万円の物件だとすると、社長が会社に払う家賃は月3〜5万円程度になるケースも珍しくありません。
差額の20万円は、会社が「経費として負担している」という扱いになります。社長の給与を増やさずに実質的な手取りを上げられる、いわば「非課税の住居補助」として機能するわけです。
年間でどのくらい節税できる?
少し具体的な数字で考えてみましょう。
法人実効税率を約33%として、年間の住宅関連コスト(ローン利息・固定資産税・修繕費など)が300万円かかっているとします。これが全額経費になれば、単純計算で約100万円の法人税が減ります。
さらに、社長個人が「低い家賃で住める」ことで、同じ生活水準を保つために必要な役員報酬を減らせます。役員報酬が下がれば社会保険料や所得税・住民税の負担も軽くなる——という二段構えの節税効果も期待できます。
もちろん物件の規模や借入条件によって金額は変わりますが、年100万円超の節税は決して大げさな数字ではありません。
実際の手順は3ステップ
社宅制度を導入するうえでやるべきことは、大きく3つです。
まず法人名義で不動産を購入すること。既に社長個人で所有している場合は、法人への売却(売買)という形で対応することもできます(ただし時価での取引が必要です)。
次に社宅規程を整備すること。「社長が社宅を使用できる」という社内ルールを文書で整えておかないと、後から税務調査で否認されるリスクがあります。規程の作成は難しいものではありませんが、税理士と一緒に確認しておくと安心です。
そして適正な賃貸料相当額を計算し、毎月きちんと徴収すること。ここが最も重要なポイントで、仮に家賃の徴収がゼロだったり著しく低すぎると、差額が社長への「給与」とみなされて課税されてしまいます。計算式自体は固定資産税評価額をベースにした国税庁の基準に従いますので、一度しっかり算出しておけば毎月の処理はシンプルです。
注意しておきたいこと
節税効果が大きい分、やり方を誤ると逆効果になるケースもあります。
特に気をつけたいのが、豪華社宅と判定されるリスクです。床面積が240㎡を超えるケースや、プール・テニスコートなどの設備がある物件は「豪華社宅」と扱われ、賃貸料相当額の計算方法が変わり、節税効果が大きく下がります。
また、法人での不動産購入はローンの審査基準も個人とは異なります。資金繰りや借入計画も含めて、早めに金融機関・税理士・司法書士と連携して進めることをおすすめします。
まだ自宅を個人名義で持っている社長、あるいはこれから住宅の購入を検討している社長は、「最初から法人で買う」という選択肢を必ず検討してみてください。一度個人で購入してしまうと、法人への売却で余計なコストや手間がかかります。始めるなら早いほどメリットが大きいです。
気になる方は、まず顧問税理士に「うちの会社で社宅制度を使えますか?」と一言聞いてみるところから始めてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。