先日、都内で不動産を複数所有する60代の社長からこんな相談を受けました。
「土地の相続税がいくらになるか試算してもらったら、想像以上に高くて…。なんとかならないものですか?」
その社長、実は自分の会社に土地を貸していたんです。でも「小規模宅地等の特例は自宅か事業用の土地だけでしょ?」と思い込んでいて、使える手札を見落としていました。
実はこれ、かなり多くの社長が陥っている誤解です。今日はその誤解を解きほぐしながら、会社オーナーだからこそ使える相続対策をお伝えします。
「自分の会社に貸している土地」も特例の対象になる
小規模宅地等の特例というのは、一定の要件を満たした土地の相続評価額を、大幅に減額できる制度です。最大で80%減という数字が独り歩きしていますが、これは「特定事業用宅地」などに適用されるケース。
今回注目したいのは「貸付事業用宅地等」という区分です。
自分の会社(法人)に対して土地を賃貸借契約で貸しているケースでは、この区分が適用できる可能性があります。適用面積は200㎡まで、減額割合は50%。つまり、評価額1億円の土地であれば、相続税の計算上は5,000万円として扱われることになります。
相続税の税率を考えると、この差は数千万円単位で効いてきます。知っているかどうかだけで、これだけの差が生まれるのが相続の世界です。
「貸しているだけ」では通らない。実態が問われる
ただし、ここで気をつけてほしいのは、「名目上の賃貸借では認められない」という点です。
税務署は、事業としての実態をしっかり確認してきます。具体的には、適正な地代を継続的に受け取っているか、賃貸借契約書が整備されているか、法人側でその土地を事業目的で実際に使用しているか、といった点が審査の対象になります。
また、相続が発生する前の保有期間や、相続人が引き続き事業を継続するかどうかも要件に絡んできます。「急いで契約書を作った」「直前に土地を取得した」といったケースでは、特例が認められないリスクもあります。
節税の話をするとどうしても「制度を使えばOK」と思われがちですが、実態が伴っているかどうかが根本です。
社長こそ、生前から設計しておく価値がある
相続対策は「亡くなってから」では手遅れです。特に小規模宅地等の特例は、要件が細かく、保有や利用の経緯が問われるため、生前からの準備が不可欠です。
会社に土地を貸している社長であれば、今すぐ確認しておきたいのは次の3点です。
- 賃貸借契約書が正式に締結されているか
- 地代が無償・著しく低額になっていないか
- 法人が実際にその土地を事業で使用しているか
これらが整っていれば、特例の適用可能性がぐっと高まります。逆に一つでも欠けていれば、今から整備する余地があります。
評価額を下げることで、次世代への影響が変わる
相続税の負担が重いと、後継者が土地を売却しなければ納税できないという事態に追い込まれることがあります。特に事業用の土地や自社ビルが絡む場合、それは会社の存続そのものに関わる問題です。
小規模宅地等の特例を活用して評価額を圧縮しておくことは、単なる節税ではなく、事業承継をスムーズにするための布石でもあります。
社長の財産の多くが不動産や自社株で占められている場合、なおさら早期の対策が重要です。「うちはまだ先の話」と思っていても、準備には数年単位の時間がかかることも珍しくありません。
今すぐ税理士に「土地の使われ方」を確認してもらう
もし今、自分の会社に土地を貸しているなら、一度その土地が小規模宅地等の特例の対象になり得るかを税理士に確認してみてください。
「対象になるかもしれない土地があるんですが」と一言伝えるだけで、専門家はすぐに状況を整理してくれます。そこから要件の整備や契約書の見直しを進めることで、将来の相続税負担を大きく変えられる可能性があります。
知っている人だけが得をする制度、使わない手はありません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。