先日、都内で賃貸マンションを複数棟お持ちの社長から、こんな相談を受けました。

「空室が数部屋あるんだけど、相続税って関係あるの?どうせ土地の評価は変わらないでしょ?」

この一言、実はかなり危険なんです。賃貸マンションを持っているだけで節税になると思っている方は多いのですが、空室の割合によって、評価額が大きく変わってしまうという事実を知らないまま相続を迎えてしまうケースが後を絶ちません。

今日は「賃貸割合」というキーワードを中心に、不動産オーナーの社長にぜひ知っておいてほしいポイントをお伝えします。


「貸家建付地」の評価減は、フル入居が前提の話

まず前提として、賃貸マンションが建っている土地は「貸家建付地」として評価され、更地よりも評価額が下がる仕組みがあります。

具体的には、借地権割合と借家権割合をかけ合わせた分だけ評価が下がるのですが、最大で約20〜21%の評価減が受けられます。億単位の物件であれば、2,000万円以上の評価圧縮になることも珍しくありません。

ただし、ここに落とし穴があります。この評価減は入居している部分にしか適用されないのです。


空室30%は「数百万円の損」になることも

仮に10室あるマンションで3室が空室だとすると、賃貸割合は70%になります。

この場合、評価減が受けられるのは入居中の7室分だけ。空室の3室分は、ほぼ更地に近い評価が適用されることになります。

土地の評価額が1億円のマンションで試算すると、賃貸割合100%なら約2,000万円の評価減が得られるところ、70%だと評価減は約1,400万円にとどまります。その差は600万円。相続税率が30%の方なら、単純計算で約180万円の税額差になります。

「たかが3室の空室で?」と思うかもしれませんが、物件規模が大きくなればなるほど、この差は雪だるま式に膨らんでいきます。


「申告前だけ入居させる」は税務署にバレます

「じゃあ、相続が近づいたら一時的に満室にすればいい」と考える方もいます。残念ながら、これは通用しません。

税務署は相続税の申告をチェックする際、**「一時的な空室かどうか」**を非常に厳しく見ています。入居者募集の広告履歴、賃貸借契約の締結日、前後の入退去状況など、継続的な賃貸経営の実態を総合的に判断します。

申告直前に急いで入居させた形跡があれば、「実質的には空室だった」と判断される可能性が高く、評価減を否認されるリスクがあります。最悪の場合、追徴課税や加算税まで発生することもあるので、小手先の対策は逆効果です。

大切なのは、日常的にしっかりと賃貸経営を継続している実態を作っておくことです。


最も怖いのは「空室のまま相続」するケース

三つの中でも最も影響が大きいのが、空室だらけの状態、あるいは全室空室のまま相続を迎えてしまうケースです。

賃貸割合が0%の場合、貸家建付地としての評価減はゼロ。土地は事実上、更地と同じ評価になります。

5億円の物件であれば、賃貸割合100%と0%の差は1億円規模に達することも珍しくありません。相続税として数千万円の差になる計算です。「賃貸マンションを持っているから安心」という認識だけで何も手を打たないでいると、思わぬ税負担を相続人に残してしまいます。


今すぐ確認してほしいこと

難しい話をしてきましたが、今日やることはシンプルです。

まず自分の所有する賃貸物件の現在の入居率を把握すること。そして、空室が続いている部屋があるなら、入居者募集を強化するか、一度税理士に現状の評価額を試算してもらうことをお勧めします。

相続は突然やってきます。「そのうち満室になるから大丈夫」と思っているうちに、対策を打てないまま相続が発生するケースを、私はこれまで何度も見てきました。

特に相続が10年以内に想定されるオーナーの方は、今期中に一度、保有物件の賃貸割合と相続税評価のシミュレーションを税理士に依頼してみてください。数字を見てから動くのと、何もせずにいるのとでは、結果が大きく変わります。


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。