先日、都内に賃貸物件を3棟持つ製造業の社長から、こんな相談を受けました。「家賃収入が増えるほど、なぜか手元にお金が残らない気がして……」

この社長は個人名義で不動産を保有していました。所得税は累進課税なので、家賃収入が積み重なるほど税率が上がっていきます。給与所得や役員報酬がすでに高い水準にある社長にとっては、家賃収入がそのまま最高税率のゾーンに乗ってしまいます。

所得税45%+住民税10%で合計55%。不動産で稼いだお金の半分以上が税金として消えていく計算です。

法人にすると、まず税率の土台が変わる

資産管理会社(法人)の実効税率は約32〜34%です(資本金の規模や所在地によって異なります)。

個人との差は最大で23%。仮に家賃収入が年間1,000万円あれば、単純計算で230万円以上の差が生まれます。ただ、法人化の効果はこの税率差だけにとどまりません。3つの特典が組み合わさることで、手残りはさらに大きく変わっていきます。

特典①:家族への役員報酬で所得を分散する

個人で不動産を持つ場合、家賃収入はオーナー一人の所得になります。

法人なら、配偶者や子どもを役員にして役員報酬を支払うことができます。たとえば年間600万円の利益を、オーナーと配偶者に300万円ずつ分散すると、累進課税の影響を大きく抑えられます。一人で600万円を受け取る場合と、二人で300万円ずつ受け取る場合では、合計の税額がまったく違う——これが累進課税の特性です。

役員には実際に業務に関与してもらう必要がありますが、適切に設計すれば効果的な節税手段になります。

特典②:減価償却費を法人全体の利益と相殺できる

不動産は経年劣化に応じて減価償却費として経費計上できます。

個人の場合、この減価償却費は不動産所得の範囲内でしか使えません。でも法人では、不動産の減価償却費を本業の利益と相殺することができます。

たとえば本業の利益が年間800万円あり、保有不動産の減価償却費が400万円あれば、課税対象の利益を400万円に圧縮できます。個人では使いきれなかった償却費が、別の利益を守るために機能する——これが法人ならではの使い方です。

特典③:個人よりも広い範囲で経費を落とせる

法人は個人よりも経費として認められる範囲が広くなります。

法人契約の生命保険料、社用車の維持費、出張費、交際費(損金算入には上限あり)など、個人では家賃収入に直接関係しないとみなされて認められないものでも、法人であれば事業に関連する支出として計上できるケースがあります。経費が増えるほど課税所得が下がり、支払う税金が減る——この積み重ねが資産管理会社ならではの強みです。

設立・維持コストとの比較も忘れずに

「結局、維持費がかかるのでは?」という声もよく聞きます。確かに法人設立には登録免許税などの初期費用がかかり、年間の税理士費用・法人住民税の均等割(最低でも約7万円〜)なども発生します。

目安として、家賃収入が年間500万円を超えてくると、これらのコストを差し引いてもメリットが出やすいと言われています。もちろん個人の所得水準や不動産規模によって異なるため、一概には言えません。

また、すでに個人名義で不動産を持っている場合、法人への移転時に譲渡税が生じることもあります。これから物件を購入するなら、最初から法人名義で取得するほうがシンプルです。


個人名義のまま不動産を持ち続けている社長は、気づかないうちに多くの税金を払い続けているかもしれません。「税率差・所得分散・減価償却・経費拡張」の4つが重なったとき、その差は想像以上に大きくなります。まずは「自分の場合はどうなのか」を税理士に確認してみることが、最初の一歩です。今期の決算前であれば、来期の戦略を組み直す余裕も十分あります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。