先日、都内で不動産管理法人を運営している社長から、こんな連絡が来ました。
「三原さん、うちがやってた節税、もう使えなくなるって聞いたんですけど、本当ですか?」
令和8年の税制改正で、不動産所有法人に関するルールが静かに、しかし大きく変わりました。消費税や所得税の話に比べて、この改正はほとんど報道されていません。でも、資産管理会社を持つ経営者にとっては、むしろこちらの方が影響が大きいかもしれない。
今回は見落とされがちな3つの変更点を、順を追って説明していきます。
3位:不動産小口化商品が「全額時価評価」に
まず知っておいてほしいのが、不動産小口化商品に関するルール変更です。
複数の投資家が共同で不動産を保有する「任意組合型」の小口化商品は、以前から相続税対策として人気がありました。購入価格は1口100万円や1,000万円といった金額ですが、相続税の評価では路線価(時価の7〜8割程度)を使えたからです。
ところが今回の改正で、取得時期を問わず「全額時価評価」に変わりました。
1億円分の小口化商品を持っていても、以前なら相続税評価は7,000万円前後だったものが、今後は1億円そのままで評価される。節税効果がほぼ消えてしまったと言っていい変更です。「もう買ってしまった」という方も多いと思いますが、既存の商品も対象になります。早めに現状の評価額を確認しておくことをおすすめします。
2位:個人が持つ賃貸物件に「5年縛り」が新設
次に、個人で賃貸物件を持っている方に直撃する変更です。
これまで、亡くなる前に賃貸物件を購入しておくと、相続税評価を路線価ベースで計算できました。更地より賃貸物件の方が評価が下がるため、駆け込みで物件を買う方が少なくなかったのです。
今回の改正では、相続発生前5年以内に取得した貸付用不動産は、路線価ではなく時価の約80%で評価するというルールが新設されました。
たとえば時価3億円の賃貸マンションを3年前に購入した場合、従来なら路線価(2億円前後)で評価されたものが、今後は2億4,000万円での評価になります。差額4,000万円分の節税効果が消える計算です。「相続前に不動産を買い込んで相続税を下げる」という王道スキームに、5年という時間的な壁が設けられた形です。
1位:法人3年縛り+個人5年縛りで「二段構え」に
ここが今回の改正で最も注目すべき点です。
法人(資産管理会社)が不動産を持つ場合、以前から「3年縛り」がありました。相続から3年以内に取得した不動産は路線価ではなく時価で評価するというルールです。今回の改正で個人にも「5年縛り」が加わったことで、法人経由でも個人でも、簡単に評価を下げられなくなりました。
整理するとこうなります。
- 法人が持つ不動産:相続前3年以内の取得分は時価評価(既存ルール)
- 個人が持つ賃貸物件:相続前5年以内の取得分は時価の約80%評価(新設ルール)
- 任意組合型の小口化商品:取得時期を問わず全額時価評価(新設ルール)
三方向から包囲された形です。「不動産を持てば節税できる」という常識が、根本から問い直されています。この改正は令和9年1月1日以後の相続から適用されます。つまり、2027年以降に発生した相続には、このルールが適用されます。
残り半年ちょっとで施行が始まります。「今のうちに手を打てるか」を税理士と一緒に点検しておくべき時期に来ています。
特に、すでに不動産小口化商品を複数持っている方、直近5年以内に賃貸物件を購入した方は、相続税のシミュレーションをやり直す必要があるかもしれません。「去年試算した数字と全然違う」というケースが出てきても、不思議ではない改正です。
節税の手段が変わっても、資産を守る意志は変わらない。まずは現状把握から始めてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。