先日、都内で不動産を数棟持つ製造業の社長から、こんな連絡が届きました。

「タワマンで節税できると聞いて買ったのに、改正で使えなくなったって本当ですか?」

本当です。そして、まだ手を打っていない社長は、今すぐ動く必要があります。

何が変わったのか、まず押さえておく

2024年1月1日以降の相続・贈与から、区分マンションの相続税評価が大きく変わりました。

これまでは、市場価格(時価)と相続税評価額の乖離を利用した節税スキームが広く使われていました。タワーマンションはとくにその差が大きく、「時価1億円の物件を2,000万円として相続税を計算できる」ようなケースもあったのです。

ところが改正後は、区分マンションに「評価乖離率」という補正係数が導入され、最低でも時価の60%まで引き上げられるようになりました。従来スキームの旨みは、ほぼ消えたと考えていいでしょう。

それでも、手がないわけではない

重要なのは、今回の改正が「区分マンション」に絞った話だということです。不動産を使った節税の扉が完全に閉まったわけではありません。賢い社長はここに気づき、すでに動いています。

一棟アパート・一棟マンションへの切り替え

今回の規制対象は、いわゆる「1室買い」の区分マンションです。一棟アパートや一棟マンションはその対象外です。

一棟建ての評価は、土地部分が路線価(時価のおよそ80%)、建物部分が固定資産税評価額(時価の50〜70%程度)をベースに計算されます。さらに賃貸に出せば「貸家建付地」「貸家」として評価が下がるため、トータルで時価の40〜50%程度まで圧縮できるケースもあります。

改正後の区分マンション(時価60%)と比較すると、一棟建てのほうがいまだ有利なポジションにある。タワマンほど「劇的な節税効果」には見えないかもしれませんが、数字で比べれば差は明確です。

法人化して減価償却を損金に落とす

個人で不動産を持つより、法人で取得するほうが節税の幅が広がります。理由のひとつが「建物の減価償却費」です。法人では毎年の経費として計上でき、利益が出ている会社ならこれが課税所得を圧縮し、法人税の節税に直結します。

ただし、ここに絶対に見落としてはいけない注意点があります。取得後3年以内は、相続税評価額が「時価」で評価されるというルールです。短期的な節税目的で買った物件を3年以内に動かそうとすると、想定外の課税が生じる可能性があります。顧問税理士と事前に出口戦略まで含めてシミュレーションしておくことが必須です。

不動産管理法人で家族へ給与を分散する

これは「収益を家族全体に分散する」という発想です。

たとえば、オーナー社長が年間1,000万円の不動産収入を個人で受け取ると、所得税の実効税率は40%を超えることもあります。一方、家族を役員とする不動産管理法人を設立し、管理業務を担う形にすれば、給与として家族に分散できます。

家族メンバーの所得が低ければ適用税率も低くなる。この実効税率の差が23〜34%ほどあれば、年間収益1,000万円の案件でも、手残りが200〜300万円単位で変わることがあります。長期で見れば、これはかなり大きな差です。

動く前に、自分の「目的」を整理する

どの手法も「やればいい」ではなく、自分の状況に合っているかどうかが最初の問いです。

  • 相続税対策なのか、毎年の所得税節税なのか
  • 手元にある資産の規模・種類
  • 家族の収入状況と実効税率のバランス

これらを整理せずに動くと、「節税のつもりが余計なコストを生んだ」という笑えない結果になりかねません。

2024年改正でタワマン節税が難しくなったのは事実ですが、それはひとつのスキームが終わっただけです。今の状況を専門家と棚卸しして、自分に合った設計を組み直す。それが賢い社長の次の一手だと思います。まだ見直しができていないなら、今期の決算が終わる前に動いておくことを強くおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。