先日、年商3億円ほどの建設業の社長から相談を受けました。\n\n「うちは役員報酬を高めに設定して、法人名義でマンションも持っている。法人税も所得税もかなり抑えられているんですが、最近ちょっと心配で…」\n\nその心配は、まったく正しい感覚です。今まさに、この節税スキームの前提が静かに崩れ始めているからです。\n\n## 「役員報酬×不動産」の複合節税が効いていた理由\n\n役員報酬を高めに設定して個人の可処分所得を増やしつつ、法人名義で不動産を取得してその費用を損金に落とす――これは長年にわたって使われてきた、法人節税の王道パターンです。\n\n設計がうまくいけば、法人税・所得税・住民税を合わせて年間200〜400万円規模の節税効果になるケースもあります。特に不動産の相続税評価額が時価より大幅に低くなる「評価のズレ」を活用すれば、節税効果はさらに大きくなる。\n\nこの仕組みが長く使われてきた背景には、相続税の評価ルールに存在した”盲点”がありました。\n\n## 2024年から始まった「評価補正の強化」\n\n変化の起点は2024年です。国税庁がいわゆるタワマン節税に代表されるマンション評価の見直しを本格化させました。\n\nこれまでは、市場価格が1億円のマンションでも、相続税評価額が2,000〜3,000万円になるケースは珍しくありませんでした。その大きな差分を使って資産を圧縮するのが「不動産節税」の核心でした。\n\nところが2024年以降、この「市場価格と評価額のギャップ」を是正する補正ルールが導入されています。結果として、評価圧縮の効果が以前より大幅に小さくなるケースが増えてきました。特にタワーマンションや都市部の高額物件は影響が顕著で、「昔と同じスキームなのに節税効果が薄れた」という声をよく聞くようになっています。\n\n## 役員報酬にも厳しい目が向いている\n\n問題は不動産評価だけではありません。役員報酬の損金算入要件についても、税務当局は常に注目しています。\n\n特に注意が必要なのが「過大役員報酬」です。売上規模や業績と不釣り合いに高い役員報酬は、法人税法上の損金不算入とみなされるリスクがあります。\n\n年商5,000万円の会社で毎月200万円以上の役員報酬を取っている場合、税務調査でその妥当性を問われることがあります。「節税目的で高く設定した」という意図が見透かされると、より厳しく評価される可能性があります。\n\n役員報酬の金額には、業種・売上規模・貢献度に見合った「根拠」が必要です。数字だけ見れば節税になっていても、その説明ができないのであれば、今のうちに整理しておく必要があります。\n\n## 今の制度が生きているうちに動く3つのこと\n\n「崩れる前に何をすべきか」という観点で、今すぐ着手できることを挙げます。\n\n① 役員報酬の根拠を整備する\n\nなぜこの報酬額が適正なのかを説明できる資料を用意しておく。業界水準、同規模他社との比較、会社への貢献内容。これがないまま高額の役員報酬を取り続けているのは、いわば丸腰で税務調査に臨むようなものです。\n\n② 不動産取得のタイミングを今一度検討する\n\n「どうせ購入するなら、今の評価ルールが有利なうちに」という判断は合理的です。ただし、収益性・出口戦略・法人の財務体力とセットで考えないと、節税どころか資金繰りを圧迫することになります。動くなら今、でも計画なしには動かないことが鉄則です。\n\n③ 個人事業主の方は法人化の検討を急ぐ\n\n個人よりも法人名義の方が節税の選択肢は広い。かつ法人化そのものが今まだ有利に機能している今は、着手する好機です。法人化には設立から運用開始まで2〜3ヶ月かかることも多く、「そのうちやろう」では今期に間に合わないことがあります。\n\n## 「変わってから考える」では遅すぎる\n\n税制改正の怖いところは、「ルールが変わった後では手が打てない」という点にあります。\n\n2024年の評価補正ルールはすでに施行されており、2026年以降も追加の見直しが続くとみられています。今ある制度を最大限活用するためには、「今の段階で動いておく」という意識が不可欠です。\n\n特に過去3〜5年で法人化、または不動産取得をされた方は、設計当時の前提が今も成立しているかどうかを確認する価値があります。今期の決算前に、顧問の税理士へ「役員報酬と不動産の節税設計、今の改正の影響を受けていませんか?」と一言確認するだけで、大きな方向転換ができることがあります。\n\n※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。