先日、法人で収益物件を2棟持っている社長の帳簿を一緒に確認する機会がありました。計上されている経費を見ると、固定資産税・火災保険・減価償却費の3点がきれいに並んでいる。「これで全部ですか?」と聞いたら、「そうじゃないんですか?」という顔をされました。
そこで終わっているんです。毎年、静かに損をしながら。
法人不動産にまつわる経費は、実はもっと広い。知っている人はしっかり使っているし、知らない人は同じことを何年も繰り返しています。今日はその「見落とし経費」の話をします。
固定資産税・保険料・減価償却で止まっていませんか
法人で不動産を持てば、固定資産税・建物の火災保険・減価償却費が経費になることは多くの社長が知っています。問題は、その先に7つの項目が眠っているということです。
① 視察の交通費・宿泊費
物件の管理状況を確認するための移動は、事業目的が明確であれば全額経費になります。「観光も兼ねた」という場合は按分が必要ですが、純粋な視察なら遠慮なく計上できます。
② 司法書士・不動産鑑定士への報酬
登記手続きや物件評価のために専門家を使ったときの費用です。「取得コストに含めるべきでは?」と迷って計上を諦めるケースがありますが、管理・運用フェーズで発生した報酬は経費として問題ありません。
③ 入居者募集の広告費
空室を埋めるために出した広告費です。「仲介手数料は計上しているけど広告費は…」という見落としが意外と多い項目です。
④ ローン保証料
融資を受ける際に支払った保証料も、原則として経費計上できます。一括払いか分割払いかで処理方法が変わりますが、金額が大きいだけに見落とすと痛い。
⑤ 書籍・セミナー等の情報収集費
不動産管理や節税に関する書籍を購入したり、大家向けセミナーへ参加した費用です。「プライベートとの境目が曖昧で…」と遠慮する社長が多いのですが、法人名義で参加・購入していれば十分に認められます。
⑥ 修繕前の建物調査費
修繕工事に入る前の構造診断や劣化調査の費用です。「修繕費は経費にしているのに調査費は計上していない」という矛盾したケースを実際によく目にします。
⑦ 通信費の事業按分
スマートフォンやインターネット回線を物件管理に使っているなら、事業使用割合に応じて按分計上できます。「個人でも使っているから」と諦める前に、使用実績を整理してみてください。
積み上げると、年50万円を超えることがある
これらを一つひとつ積み上げると、規模にもよりますが年間50万円を超えるケースは珍しくありません。
法人の実効税率はおおよそ22〜34%ですから、年50万円の経費が増えれば年間11万〜17万円の節税効果が生まれる計算になります。10年間で見ると、最大170万円の差です。
「大げさな話では」と思う方もいるかもしれませんが、毎年積み重なる数字というのはそういうものです。固定資産税の申告を毎年丁寧にやるのと同じ感覚で、これらの項目も毎期チェックする習慣をつけるだけで、数年後に大きな違いになって返ってきます。
経費にするための大前提:目的の明確化と証拠書類
経費計上で大切なのは「事業目的の明確化」と「証拠書類の保管」をセットで進めることです。
視察に行くなら行程表や目的メモを残す、セミナーなら受講証明書を保管する、通信費の按分なら使用実績の記録を用意する。こうした地道な積み重ねが、税務調査のときに物を言います。「経費にできると聞いたので計上しました」だけでは、後から否認されるリスクがあります。
法人で不動産を持っているのに、これらの項目を一度も洗い出したことがないなら、今期の決算前に税理士と一緒に棚卸しをしてみてください。思った以上に「取りこぼし」が見つかるかもしれません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。