「うちの会社、税務調査が入ったらどうなるんでしょう?」\n\n先日、都内でマンションを数棟保有する不動産法人の社長から、こんな相談を受けました。年商は約3億円。特に悪いことをした覚えはないとおっしゃっていたのですが、話を聞いていると正直ヒヤリとしました。不動産業には、知らないうちに踏んでしまいやすい”地雷”がいくつもあるからです。\n\n## 不動産法人が税務署に目をつけられやすい理由\n\nなぜ不動産法人が優先的に調査されるのか。理由はシンプルです。\n\n1棟のマンションを取得するだけで、数億円の資金が動きます。取引金額が桁違いに大きいため、申告に少しのズレがあるだけで追徴税額が一気に膨らむのです。さらに「悪質な隠蔽・仮装があった」と税務署に判断されると、通常の過少申告加算税(10〜15%)ではなく、重加算税35%が上乗せされます。数千万円の追徴にこれが乗ってくると、資金繰りが一気に苦しくなるケースも珍しくありません。\n\n国税庁の調査データでも、不動産業の実地調査割合は他業種より高水準で推移しています。税務署にとって不動産法人は、「費用対効果の高い調査先」なのです。\n\n## 調査官が必ずチェックする5つのポイント\n\n実務で見てきたケースをもとに整理すると、問題になりやすい論点は5つに絞られます。\n\n① 修繕費と資本的支出の区分ミス\n\n建物の修繕にかかった費用は、「修繕費」として全額その年に経費計上できる場合と、「資本的支出」として減価償却しなければならない場合があります。大規模修繕を丸ごと修繕費にしているケースは非常に多く、税務調査で最初に確認される箇所の一つです。\n\n② 法人・個人オーナー間の不明瞭な取引\n\n法人と個人の間での家賃設定や修繕費の負担関係が曖昧だと、法人側の経費計上をまるごと否認されるリスクがあります。「どっちが払っても同じ」という感覚が一番危険です。\n\n③ 私的流用が疑われる経費計上\n\n社長の個人的な旅行や飲食を接待交際費として計上している場合、「誰と・どんな目的で」という証拠書類がなければ、否認されても反論できません。\n\n④ 減価償却の過大計上\n\n中古物件の耐用年数計算は複雑で、取得価額に含めるべき附帯費用の処理ミスも含めると、減価償却の過大計上は意外なほど多く見られます。\n\n⑤ 家賃収入の計上漏れ\n\n敷金・保証金の処理や退去精算のタイミングなど、家賃収入の計上漏れが起きやすい場面は多岐にわたります。税務署はここを「意図的な隠蔽」とみなしやすく、重加算税に直結するリスクがあります。\n\n## 特に危険な「法人と個人の間の取引」\n\n5つの中でも、調査で最も争点になりやすいのが、法人と個人オーナーの間の取引です。\n\n個人名義の不動産の修繕費を法人が負担していたり、逆に法人の建物を個人が無償で使っていたりするケース。お互いを知り尽くしている間柄だからこそ、手続きが「いい加減」になりがちです。\n\n家賃設定が相場より著しく低ければ「役員給与のみなし」、修繕費の負担が不明確なら「経費一切否認」という判断が下されることもあります。数年分の追徴がまとめて来たときの金額は、相当なものになります。\n\n## 「知らなかった」では済まされない現実\n\n修繕費の区分ミスも家賃の計上漏れも、「悪意ではなく、処理方法を知らなかっただけ」というケースがほとんどです。ところが税務署にとっては、申告内容が正しいかどうかだけが問題であり、意図の有無は加算税の種類に影響するだけです。\n\n今回紹介した5つのポイントに一つでも心当たりがあるなら、次の決算を迎える前に専門家と一緒に棚卸しをしておくことをおすすめします。自分で気づいて修正する「修正申告」のほうが、調査で指摘されるよりも有利な条件で済むことが多いからです。\n\n顧問税理士に「不動産取引の処理を一度確認したい」と声をかけるだけで、大きなリスクを未然に防げます。思い当たる節があるなら、今期中に動いておくのが得策です。\n\n※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。