先日、都内に区分マンションを5戸持っているある社長から相談を受けました。「ここ数年、税理士に勧められて不動産で相続対策をしてきたんですが、最近になって『その方法、もう使えないですよ』と言われて…」。

こんな言葉から始まった相談、実は最近かなり増えています。2024年から2025年にかけての税制改正で、これまで「王道」と呼ばれていた不動産節税スキームが、立て続けに封じられているからです。

知らないままでいると、対策しているつもりが逆に税負担を増やしてしまう可能性もあります。今回は、特に注意すべき3つのポイントを整理しておきます。

タワマン節税は、事実上終わった

まず「タワマン節税」の話から始めましょう。

これまで、タワーマンションは市場価格と相続税評価額の乖離が大きく、「現金で1億円持つより、タワマンを1億円で買った方が相続税を大幅に減らせる」という節税効果がありました。評価額が市場価格の2〜3割程度になるケースも珍しくなかったのです。

ところが2024年から、この乖離を是正するルールが導入されました。具体的には、相続税の評価額が市場価格(国税庁が算定する「理論値」)の60%を下回る場合、自動的に評価額を引き上げる仕組みです。

これによって何が起きたか。節税効果が「激減」ではなく、ほぼ「消滅」したケースが続出しています。タワマンを中心に相続対策を設計していた社長にとっては、根本から戦略を見直す必要が出てきました。

すでに購入済みの物件を持っている方は、現在の評価額がどう変わるか、一度税理士に試算してもらうことをおすすめします。

「3年前の贈与なら大丈夫」は、もう通用しない

次は、贈与の話です。

これまで相続税の対策として広く使われていたのが、毎年少しずつ子どもや孫に贈与する「暦年贈与」。相続が発生する前の3年間に行った贈与は相続財産に持ち戻されますが、それより前の贈与は安全——そういう理解で動いていた方が多かったと思います。

しかし2024年以降、この「3年ルール」が段階的に「7年ルール」へと延長されることになりました。

2024年1月1日以降に行った贈与から順次適用が始まり、最終的には相続発生前7年以内の贈与が持ち戻しの対象になります。ただし、延長された4〜7年前の分については100万円の控除が認められるため、全額が対象になるわけではありません。

とはいえ、影響は小さくありません。「あと数年は大丈夫」と思っていた計画が、根本から見直しを迫られているケースもあります。現在進行中の贈与プランがある方は、今すぐ実行スケジュールを再確認してください。

法人への不動産移転、安易にやると両方に課税される

3つ目は、個人から法人への不動産移転についてです。

所得税対策として「法人を作って、個人が持っている不動産を会社に移す」という手法を取る方がいます。確かに法人化には節税メリットがあるケースもありますが、やり方を間違えると大変なことになります。

問題になるのが「低額譲渡」です。時価より安い価格で法人に不動産を売ると、差額部分に対して個人と法人の両方に課税が発生する可能性があります。個人側は「みなし譲渡課税」、法人側は「受贈益」として課税対象になるのです。

たとえば、時価1億円の不動産を5,000万円で法人に譲渡した場合、差額の5,000万円が問題になります。「安く売って節税しよう」という発想が、むしろ税負担を倍増させるリスクを孕んでいるわけです。

不動産の法人移転を検討している場合、適正な時価での取引が絶対条件です。不動産鑑定士による評価や、税理士との綿密な事前確認なしに動いてはいけません。

「まだ大丈夫」と思っている間に、手遅れになる

今回挙げた3つのポイントに共通しているのは、「昔は使えた方法が、今は使えない」という現実です。

税制は毎年変わります。特に2024〜2025年は、資産家・不動産オーナーへの課税強化という方向性が明確に打ち出された改正でした。以前の税理士からのアドバイスをそのまま続けているだけでは、気づかないうちにリスクを抱える可能性があります。

今年度中に一度、自分の不動産節税プランを棚卸しすることをおすすめします。現状の評価額の確認、贈与スケジュールの再設計、法人移転の適否判断——どれも早く動くほど選択肢が増えます。税制改正への対応は、時間との戦いでもあります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。