先日、都内でビルを数棟持つ不動産オーナーの社長とお話しする機会がありました。「タワマン買って相続税ゼロにできるって、まだ使える手ですよね?」——その一言に、思わず言葉が詰まりました。

2026年の今、その方法はもう通用しません。ここ数年で立て続けに税制改正が入り、不動産を活用した相続・贈与の節税策は根本から見直しが必要な時代になっています。

知らずに古いスキームを使い続けると、節税どころか多額の追徴課税が発生するリスクも出てきています。特に影響が大きい3つの改正ポイントを、できるだけわかりやすく整理します。

タワマン節税がついに封じられた

長年、富裕層に活用されてきた「タワマン節税」。市場価格1億円のタワーマンションが、相続税評価では3,000万円以下になるケースも珍しくなく、その乖離を利用した節税策として広く使われてきました。

しかし2024年1月から、ルールが変わっています。相続税評価額が市場価格の60%を下回る物件については、税務当局が「乖離が大きすぎる」として評価額を補正できるようになったのです。

1億円の物件を3,000万円評価で申告しようとすると、国税側から「最低でも6,000万円以上で評価すべき」と是正が入る可能性があります。節税効果は大幅に薄れ、場合によっては想定外の課税が発生することも。

すでに物件を保有している方も、現在の評価額が補正対象にならないかどうか、一度確認しておくことをおすすめします。

生前贈与「7年ルール」が2026年から本格化する

「元気なうちに不動産を子供に贈与しておけば、相続税がかからない」——この発想も、2023年の税制改正で大きく変わりました。

改正前は、亡くなる前3年以内の贈与が相続財産に「持ち戻し」されるルールでした。ところが改正後は、この期間が7年に拡大されています。

2026年は特に注意が必要な年です。改正が施行された2024年以降の贈与が徐々に対象範囲に入ってくることで、「数年前に贈与を済ませたから安心」と思っていた方にも影響が出始めています。

不動産は1件あたりの金額が大きいため、1件の贈与が持ち戻されるだけで相続税が数百万円単位で変わることも珍しくありません。「早めに動いたつもりが、かえって課税を強化させてしまった」という事例が、税理士の実務でも増えてきています。

相続時精算課税、土地に使うと別の落とし穴がある

2023年の改正で、相続時精算課税に年110万円の基礎控除が追加されました。2,500万円まで贈与税が非課税になる制度と合わせて使いやすくなった印象がありますが、一つ大きな盲点があります。

相続時精算課税を使って取得した土地には、「小規模宅地等の特例」が適用されません。

この特例は、自宅や事業用地の相続税評価額を最大80%減額できる非常に強力な措置です。評価額5,000万円の土地であれば、特例適用で1,000万円評価まで下げることができます。これを使えなくなると、相続税の差額は数百万円どころか1,000万円を超えることもあります。

「精算課税で贈与してお得にしたつもりが、特例が使えなくて大きく損をした」という事例は実務でよく見かけます。土地に精算課税を使おうとしている場合は、必ず事前に税理士に確認してください。

まず「今の節税策が有効かどうか」を確認する

3つの改正に共通するのは、「以前は合法で有効だった手法が、今はリスクになりうる」という点です。

税制は毎年少しずつ変わっていきますが、不動産に絡む改正はここ数年で特に大きく動いています。「以前に税理士から聞いたスキームだから大丈夫」と思っていても、当時のルールがすでに変わっているケースがあります。

不動産を保有している経営者や資産家の方は、今期中に一度、税理士と一緒に現状の節税策を棚卸しすることを強くおすすめします。新しいルールに照らして有効かどうかを確認するだけで、将来の課税リスクを大きく減らせます。節税の常識は、時代とともに変わるものです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。