先日、資産管理会社を持つある社長から、こんな相談を受けました。

「親の相続が近づいてきて、自分なりに試算してみたんですが、不動産だけで数千万の相続税がかかりそうで……。何かできることはありますか?」

実は、その物件の「使い方」次第で、相続税の評価額を大幅に圧縮できる可能性があります。知っているのと知らないのとでは、手元に残るお金が数千万円変わることも珍しくありません。

相続税は「時価」で計算しない

まず押さえておきたいのが、相続税は市場価格(時価)ではなく、国が定めた「評価額」を使って計算するという点です。

この評価額、実は時価よりかなり低く設定されていることが多いんです。土地の場合は「路線価」という国の基準値で計算しますが、路線価は時価のだいたい8割程度。その時点ですでに2割の圧縮になります。

さらにその土地を賃貸に出していると、「貸家建付地」として追加の差し引きが加わります。借地権割合と借家権割合を掛け合わせた分だけ、評価がさらに下がる仕組みです。

建物も「固定資産税評価額ベース」で圧縮できる

建物も同じ考え方が使えます。

建物の相続税評価額は、固定資産税評価額の70%が基準です。そしてその建物を賃貸中であれば、借家権割合(通常30%)の分だけさらに評価が下がります。時価に対して実質49%程度まで下がるケースもあります。

土地と建物、両方に評価減が働く。これが賃貸不動産の大きな強みです。

1.5億の物件が1億以下になることも

具体的な数字で見てみましょう。

市場価格1億5,000万円の賃貸マンション(土地・建物合計)があったとします。路線価、貸家建付地の控除、建物の評価減を積み上げていくと、相続税評価額が1億円を切るケースは珍しくありません。

差額5,000万円以上が、合法的に圧縮できる金額です。相続税の最高税率は55%ですから、課税対象が5,000万円下がれば、税額ベースで最大2,750万円もの節税効果になります。自宅だけを持っている場合と比べると、その差は歴然です。

ただし「何でもいい」わけではない

ここで一つ注意してほしいのですが、不動産なら何でも相続税対策になるわけではありません。

効果が高いのは、賃貸契約がきちんと成立していること、路線価が設定されているエリアの土地であること、空室率が低く実態として賃貸経営が機能していること、といった条件が揃った物件です。

「相続税対策のためだけに買った」という実態のない不動産は、税務調査で問題になるケースもあります。あくまで実際に賃貸経営として成立していることが大前提です。物件の種別や賃貸条件によっても効果は変わります。

今持っている不動産を見直すだけでも変わる

新たに物件を購入しなくても、今持っている不動産の「使い方」を見直すだけで評価額が変わることがあります。

自己使用だった物件を賃貸に転換したり、法人(資産管理会社)を活用した形に組み替えたりと、選択肢はいくつかあります。どの方法が最適かは、保有物件の状況や家族構成によって変わるため、一概には言えません。

相続が発生してからでは手遅れになることが多いので、親御さんの資産状況が把握できるうちに、一度税理士と一緒に棚卸しをしておくことをおすすめします。「うちは関係ない」と思っていても、不動産を持っているご家庭なら必ず確認する価値があります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。