先日、資産家の社長からこんな相談を受けました。

「タワマンで相続対策しようと思っていたのに、税理士から『もう使えない』と言われた。どうすればいいんだ?」

同じような悩みを持つ社長が、今とても増えています。2024年の税制改正によって、タワーマンションを使った相続税の圧縮スキームは事実上、封じられました。改正後は市場価格の約60%まで評価額が強制的に引き上げられるルールになったため、以前ほどの節税効果が出なくなったのです。

ただ、ここで諦めるのは早いです。タワマンが使えなくなった分、別の不動産が相対的に有利になっているという現実があります。


タワマン規制で「割を食った人」と「恩恵を受けた人」

税制改正というのは、常に「勝ち組と負け組」を生みます。今回のタワマン規制で割を食ったのは、都心の高層マンションを相続対策に使おうとしていた層です。

一方で、地方の収益不動産や古いアパートをすでに持っていた人たちは、今も昔と変わらない評価の恩恵を受け続けています。評価額が市場価格の30〜40%程度に抑えられるケースが、依然として存在するからです。

たとえば5億円の資産が2億円の評価になれば、相続税の課税対象が一気に3億円圧縮されます。税率にもよりますが、これだけで相続税が数千万円単位で変わってくる話です。


今でも有効な「3つの不動産」

1. 地方の築古アパート

地方にある古いアパートは、市場での売買価格よりも相続税評価額が大きく低くなるケースがあります。

理由はシンプルで、相続税の評価は「路線価 × 面積」を基本としており、地方の地価は都心と比べて低い。さらに建物は築年数に応じて固定資産税評価額が下がっていくため、相続評価が実勢価格を大幅に下回ることになります。

ポイントは「賃貸割合」です。部屋が実際に賃貸に出されている割合が高いほど、貸家建付地としての評価減が適用されます。空室だらけでは意味がありませんので、稼働率の管理が前提です。

2. 駐車場付きの一棟ビル

地方の繁華街や駅前にある、1階が店舗・上階が事務所や住居というタイプの一棟ビルも、評価と実態のギャップが出やすい物件です。

駐車場部分は「貸駐車場」として評価されますが、建物と土地を一体で評価するときに、小規模宅地等の特例との組み合わせが効いてきます。特に「貸付事業用宅地」の特例では、200㎡までの部分について評価額を50%減額できる規定があります。

購入価格と評価額のギャップが大きい物件を選ぶことが、ここでの攻略ポイントです。

3. 賃貸割合の高い地方の一棟マンション

地方都市の駅周辺にある、入居率の高い小規模マンションも注目です。

先ほども触れた「賃貸割合」と「小規模宅地等の特例」を組み合わせることで、相続税評価額を大幅に下げることができます。特に、相続人が引き続き貸付事業を継続する意思がある場合には、特例の適用要件を満たしやすくなります。


「賃貸割合」と「小規模宅地特例」の組み合わせが肝

ここで少し技術的な話をすると、相続税の評価で最も効くのはこの2つのファクターの掛け算です。

賃貸割合が高ければ土地・建物ともに評価額が下がり、そこに小規模宅地等の特例が乗ると、さらに50%の評価減が加わります。条件が揃えば、実勢価格の3割台まで評価を圧縮できるケースも出てきます。

ただし、この特例には「相続開始前3年以内に新たに始めた貸付事業は対象外」という制限があります。つまり、亡くなる直前に慌てて買っても使えない。早めに動くことが絶対条件です。


「安くて節税になる物件」だけを選ぶ危険

ここで一つ、注意点をお伝えしておきます。

節税効果だけを追いかけて、収益性の低い物件をつかんでしまう社長が後を絶ちません。相続税は確かに減るかもしれませんが、その後の管理コストや修繕費、最終的な売却時の損失を考えると、トータルで損をしていたというケースもあります。

節税は「手段」であって「目的」ではありません。まず「この物件は事業として成り立つか」を確認した上で、節税効果を乗せていくという順番を守ってください。


まだ対策を始めていない社長へ

タワマン節税が使えなくなったからといって、不動産を使った相続対策そのものが終わったわけではありません。むしろ、タワマン一辺倒だった層がいなくなったことで、地方の収益不動産への注目が高まっています。

今動いている社長と、まだ何もしていない社長では、5年後・10年後に数千万円単位の差がつく可能性があります。相続対策は時間が最大の味方です。「まだ元気だから」と先送りにせず、今期中に信頼できる税理士と一度シミュレーションしてみることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。