先日、年商3億ほどの建設会社を経営するオーナー社長から、こんな相談を受けました。

「自分が持っている賃貸マンション、相続したら子どもたちがどれだけ税金を払うのか試算してみたら……ちょっとゾッとしまして」

地価の上昇と相続税の課税強化が重なり、不動産オーナーの相続税負担は想像以上に大きくなっています。そこで今日は、中小企業オーナーがここ3年で急速に注目し始めている、ある節税手法についてお話しします。

個人名義の不動産は、相続でそのまま時価に近い金額で評価される

個人で不動産を所有していると、相続が発生したとき原則として「時価に近い評価額」で課税されます。

土地なら路線価(時価の約80%)、建物なら固定資産税評価額(時価の約60〜70%)という評価減はあるものの、都市部の不動産は数億円単位で評価されることが珍しくありません。たとえば東京都内に3億円の賃貸マンションを持っていれば、路線価ベースで約2.4億円、そこから基礎控除を引いても数千万円単位の税負担が生じます。

問題は、その税金を子どもたちが現金で用意できるか、という点です。不動産は簡単に分割できませんし、売って納税するにも時間がかかります。相続税の支払いで揉める家族を、私はこれまで何度も見てきました。

法人名義にすると「株式評価」に切り替わる

ここで注目されているのが、不動産を法人(資産管理会社など)の名義で保有するという手法です。

不動産を個人名義から法人に移すと、相続の対象が「不動産そのもの」ではなく「法人の株式」に変わります。非上場の中小企業の株式は、会社の純資産や収益力をベースにした計算方法で評価されます。この計算では、法人が抱える借入金や諸費用が差し引かれるため、不動産の時価よりも評価額が圧縮されるケースが多いのです。

たとえば先ほどの3億円のマンションを法人名義にして、購入時の借入金が残っていれば、法人の純資産はその分だけ低く計算されます。結果として株式の評価額が下がり、相続税の課税対象となる金額が大幅に減少する、という仕組みです。

実際にどのくらい効果があるのか

あくまで個別ケースによりますが、この手法を活用して相続税を最大50%程度削減できた事例が実際に出てきています。

億単位の不動産を持っているオーナーにとって、この差は文字通り「億単位の節税」です。知っているかどうかだけで、将来の相続時に子どもたちが負担する金額がまるで変わってくる。それが「ここ3年で活用する社長が急増している」と言われる理由です。

ただし、全員に同じ効果があるわけではない

一点、強調しておきたいことがあります。この手法はすべての人に一律に効果があるわけではありません。

効果の大きさは、法人の規模・業種・株主の構成・借入の状況・不動産の種類など、多くの要素によって変わります。場合によっては、法人化することでかえって評価が上がるケースもゼロではありません。また、不動産を法人に移す際には登録免許税・不動産取得税・譲渡所得税なども発生します。移転コストと節税効果を比較しなければ、トータルで損をする可能性もあります。

「相続税が減ると聞いてやってみたら、移転コストで結局プラスマイナスゼロだった」という失敗を防ぐためにも、事前に税理士による個別試算を受けることが絶対条件です。

準備は元気なうちに始めるのが鉄則

「相続の話はまだ早い」と思っている社長も多いと思いますが、法人化のスキームを整えるには時間がかかります。法人の設立から不動産の移転、税務上の評価が安定するまで、場合によっては数年単位の準備が必要です。

今、手元に不動産を持っているオーナー社長であれば、まず「現状の相続税評価額がいくらか」を一度試算してもらうところから始めることをおすすめします。数字を把握するだけで、次の打ち手が一気に明確になるはずです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。