先日、資産管理会社を複数持つある社長から、こんな話を聞きました。「タワマンを3棟買って、相続対策は万全だと思っていたんです。でも最近、税理士に『設計を見直した方がいい』と言われて……」。

その方、2024年以降の税制改正の内容を全くご存じなかったんです。

不動産節税は長らく「最強の節税手法」と呼ばれてきましたが、2024年から立て続けに制度が変わっています。今回は、多くの社長がまだ気づいていない3つの変化をお伝えします。

タワマン節税、昔の前提では動かなくなった

まず1点目は、マンションの相続税評価方法の変更です。

これまでタワーマンションや区分マンションは、相続税の計算上、時価の30〜40%程度の評価額で申告できるケースがありました。市場価格5億円の物件が相続税評価額では1.5億円、という事例も珍しくなかったのです。

ところが2024年1月から、新たな補正ルールが導入されました。市場価格と相続税評価額の乖離が大きすぎる場合、評価額が市場価格の60%以上になるよう補正されます。一言でいえば、「評価額を極端に下げすぎることはできなくなった」ということです。

従来の大幅節税を前提に物件を取得している場合、想定していた節税効果が大きく減る可能性があります。すでに保有している物件についても、相続税のシミュレーションをやり直してみる価値があります。

「早めに贈与した」が、もう安全策とは言えない

2点目は、生前贈与の加算期間の延長です。

これまでは、亡くなる前3年以内に贈与した財産は相続財産に加算される「3年ルール」がありました。だから「早めに子どもに不動産を贈与しておこう」という戦略が有効だったのです。

しかし、2024年1月以降の贈与から、この加算期間が段階的に7年まで延びていきます。最終的に7年ルールが完全適用されると、亡くなる7年前まで遡って相続財産に組み込まれることになります。

たとえば今から不動産を子に贈与したとして、その効果が相続税対策として完全に機能するためには、7年以上生存し続ける必要があるわけです。「とりあえず早めに贈与」という発想自体を、根本から見直す必要が出てきています。

贈与した物件の数や時期によっては、既存の計画を全面的に組み直した方がいいケースもあります。担当税理士と一度シミュレーションをしておくことをお勧めします。

デジタル管理、「紙でいい」は通用しなくなった

3点目は、電子取引記録の保存義務化です。

2024年1月から、電子的に受け取った取引データは、電子データのまま保存することが完全義務化されました。不動産賃貸・売買の場面でも例外ではありません。

テナントからメールで届く賃料の振込通知、電子契約で締結した売買契約書、PDFで受け取った修繕費の請求書——これらはすべて、電子データとして適切に保存・管理しなければなりません。印刷して紙ファイルに綴じておくだけでは、もう要件を満たさないのです。

対応が遅れている法人は、税務調査の際に指摘を受けるリスクが高まっています。対応方法はそれほど複雑ではなく、メールの保存ルールを整備し、取引ごとにフォルダで管理するだけで基本要件はクリアできます。まず現状を棚卸しして、抜け漏れがないか確認してみてください。

相続対策は「一度作ったら終わり」ではない

3つの変化を並べると、共通点が見えてきます。どれも「2024年以降に一気に変わった」という点です。

税制改正は毎年あるものですが、2024年はとくに不動産と相続の分野で大きな変化が重なりました。数年前に税理士と設計した節税プランが、現行の制度と噛み合わなくなっているケースは少なくありません。

まずは今の保有不動産について、現行の評価方法で相続税がどう変わるか確認するところから始めてみてください。問題が見つかれば対策は打てますが、気づかないまま時間が過ぎると選択肢は狭まります。

不動産節税は今でも有効な手法です。ただし、最新の税制に対応した設計が前提です。顧問税理士との定期的な見直しを習慣にしておくことが、結果的に一番大きな節税につながります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。